2022年8月11日(木)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2022年8月5日

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唐木英明 (からき・ひであき)

東京大学名誉教授

1964年東京大学農学部獣医学科卒。農学博士、獣医師。東京大学農学部教授、日本学術会議副会長、倉敷芸術科学大学学長などを経て現職。著書に『不安の構造 リスクを管理する方法』(エネルギーフォーラム新書)。

 第5波までは日本の感染者は欧米に比べて桁違いに少なく、「ジャパン・ミラクル」と言われた。日本だけでなく、東南アジアとアフリカ諸国の感染者数が少なかったので、それは日本の対策のおかげではなく、日本人やアフリカ人が持つ免疫系のおかげだったと考えられる。

 世界の状況を見ると、第6波の感染者数がこれまで最大であり、第7波はずっと少ない数でピークを過ぎている。日本では第7波の感染者数が最大になったのだが、それは、これまで日本人を守ってきた免疫系をBA5型が回避した結果かもしれない。これらの推測については、今後の検証が必要である。

ワクチン接種で減らない感染者

 いずれにしろ、国民の7割が免疫を獲得する集団免疫を達成すれば、感染は終わるという考え方に間違いはない。これまでの経緯から、次々と変異株が発生するため、感染により集団免疫を実現することができないことは明らかだ。残る手段はワクチン接種によりすべての変異株に対抗する集団免疫を達成することしかない。

 日本では、昨秋に高齢者の9割、全年齢の8割がワクチン接種を完了したので、もしワクチンが有効であれば、集団免疫を達成したはずである。その直後に第5波が発生したが、高齢者の感染が低くなったのはワクチンの効果とも考えられる。

 ところが今年2月には、過去最大の感染者数を記録する第6波が発生した。国民の8割がワクチンを接種した後で大きな流行が発生したことから、ワクチンで感染を止められないことが明らかになった。同様のことが世界各国でも起こっている。

 その原因は、ワクチンの効果が急速に失われたことしか考えられない。これまでのデータを見ると、たしかにワクチンの効果は短期間で減弱する。最新の英国の研究では、ワクチン接種6カ月後には感染予防効果は見られなくなるが、重症化予防効果は残るという 。また現在流行しているオミクロン株に対して、ワクチンは感染防止効果も重症化予防効果も弱いことが分かってきた。 

 日本では昨年12月に3回目の接種が始まり、6月には約6割の国民が接種を終わった。こうしてまた集団免疫に近づいたはずなのだが、7月に入るとこれまで最大の第7波が起こった。ということは、現在流行しているBA5型に対するワクチンの感染予防効果はほぼなくなったと考えられる。

 これまでの調査によれば、ワクチンの追加接種はある程度の感染予防効果があるが、その持続期間は短いという。これはBA5型以前の調査であり、BA5型に対する効果はさらに減弱しているのかも知れない。今年5月から4回目の接種が始まっているが、これまでの経験から、その感染防止効果はほとんど期待できないのではないだろうか。

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