すると、日本経済と財政状況がどうにもならなくなって、天下りも当然廃止、公務員も大量解雇、年金も大幅減額、農業保護も止めるしかないという状況にならないと、解雇自由の原則を貫くのは無理ではないだろうか。
むしろ、その前にできることから始めた方が良いのではないか。まず、不況になっても雇用を維持している企業を助ける雇用調整助成金は止めた方がよい。一時的な不況でまた需要が回復するのなら、助成金を得られなくても、企業は雇用を維持しようとする。産業構造が転換するためには、雇用を維持するよりも雇用の移動に助成金を払った方が成長産業への支援になる。これは実際に、その方向に進んでいるようだ(ロイター13年3月15日)。
また、解雇よりも賃金を自由に決められるようにした方が簡単である。一度決めた賃金を下げるのは合理的理由がいる。その理由を裁判官が納得するように説明するのは難しい。例えば、10年前までの賃金には自由に引き下げられるようにするとしてはどうだろうか。多くの経済学者が唱えている解雇の金銭補償を認めるのもよい。企業による金銭賠償で解雇を可能にすることは、解雇規制の厳しいドイツでも認められている。金銭賠償を勤続年数に応じるものとすれば、正規と非正規の差別も少なくなる。また、企業にとって正社員解雇のコストがあらかじめ予測できるので雇用を拡大しやすくなる(八代尚宏氏『新自由主義の復権』第7章、中公新書)。
私は、正社員も公務員も日銀総裁も農家も、あらゆる既得権者を平等に扱うことが、改革を進めやすくすることになると思う。
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