2024年12月2日(月)

バイデンのアメリカ

2022年8月10日

 その背景にあるのが、「1・06事件」をめぐり刑事訴追を視野に入れたトランプ氏に対する司法省の本格捜査の動きだ。

 昨年来この問題について一切沈黙を守ってきたメリック・ガーランド司法長官は、去る7月27日、NBCテレビ番組に出演、この中で「『1・06事件』を引き起こし、前回大統領選挙結果を覆そうとしたトランプ氏を起訴する用意はあるか」との質問に対し「われわれは、躊躇せず徹底した事件究明による決断を急いでいる。大統領選による平和的な権限移譲は民主主義の基礎をなすものであり、それを邪魔する者は、誰であれ法で裁く。法の下の公正を期すのに恐れも偏見も持っていない」と、一歩踏み込んで発言、各メディアもこれを「至急報」として大きく取り上げた。

 ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、司法省は、米下院特別調査委員会による最近の核心に迫る一連の公聴会審議を踏まえ、最近になって、刑事捜査の焦点を「20年大統領選挙結果の転覆およびバイデン大統領の正式就任妨害へのトランプ関与」に絞り込んでおり、すでにこの観点から、直接工作にかかわったとされる「複数の人物」から重要証言を得た。

 また、ワシントン・ポスト紙もこの関連で、米連邦捜査局(FBI)捜査官が、マーク・メドウズ前大統領首席補佐官はじめトランプ政権下の「政府当局者および側近たち」の電話記録を押収済み、と報じた。これらの証拠物件の中に、トランプ氏との直接会話内容が含まれることは確実と見られている。

 さらに、連邦大陪審は今月初め、大統領の最側近でホワイトハウス法律顧問の要職にあったパット・シポローネ氏に証人喚問しており、近く、前大統領の事件直接関与について詳しい証言を求めることになっている。

 とくに同氏は、これまで、下院調査委での証言要請を拒否し続けてきただけに、今回、法的強制力を持つ大陪審でどこまで核心に触れる証言を行うかに大きな関心が寄せられている。

ついに動き出したFBI

 このように、トランプ氏に対する司法省捜査は、「風雲急を告げる段階」(英ガーディアン紙)に入ってきたことは確かのようだ。

  こうした矢先、FBIは8日早朝、トランプ氏のフロリダの自宅を強制捜索、極秘資料など多数の関連資料を押収した。トランプ氏本人は、自宅を離れ、ニュージャージー州の別邸に滞在中だったが、短い声明文を発表し、家宅捜索の事実を認めるとともに、バイデン政権の〝政治介入〟だとして、非難した。

  ニューヨー・タイムズ紙などの報道によると、家宅捜索はFBI捜査官多数によって行われ、邸内の個人的金庫も破壊した上で、重要書類、メール・ファイルなども持ち出されたという。

  FBIが過去、歴代大統領の自宅の強制捜索に踏み切ったことはほとんど、前例がなく、今回の場合、裁判所の裁可のみならず、司法省の最高レベルの判断が働いたことは確実とみられている。

  FBIはすでに、『1・06事件』捜査にからみ、トランプ政権当時のホワイトハウス高官らの電話記録などを押収しており、今回のトランプ氏自宅捜索との関連が注目される。

 果たして起訴か不起訴か――その時期は不明だが、もし、11月中間選挙前にも、司法が「起訴」判断を下した場合、その瞬間に、トランプ氏の次期大統領選早期出馬表明の可能性は、間違いなく立ち消えになってしまうことは間違いなさそうだ。

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