2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年8月12日

今後2年以内に中国は必ず行動する?

 このように中国は、いよいよ香港に次いで台湾を「一国二制度」下に置き、または親中政権の成立を促して従属下に置くことで、台北までの高速鉄道を実現させ、「中華民族の偉大な復興」を高らかに告げる段取りを整えている。

 最近中国は、英国による香港支配を極めて厳しい表現で非難し、今般の台湾海峡危機にあたっても日本の批判に対してむしろ「台湾問題における日本の歴史的責任を問う」と強烈な反応を見せている。これらはひとえに、領土面での「核心的利益」が犯され続けた屈辱の近現代史を完全に過去のものにし、外国が香港・台湾に及ぼした価値観をも消し去ることで、「本来の中国文明が真正に覚醒したことによる統一国家の夢」を実現させようとする決意の表れである。

 とはいえ、恐らく習近平政権も、なるべく「穏便」に統一を進める方が良いと考えていることであろう。

 台北への高速鉄道の35年完成を見据えれば、遅くとも24〜25年頃には着工することが望ましいことから、中国は今後2年以内を目途に、台湾に対してあらゆる手段を用いて「統一戦線工作」を仕掛ける可能性が高い。

 具体的には、軍事的・経済的圧力を極限まで高め、台湾の人々の抵抗心を削ぎ、中国との協力によってはじめて台湾の将来があると改心させ、親中的な国民党の選挙勝利に持ち込む一方、日米両国に対しても「台湾に手出しをすれば必ず多大な損害を被る」と躊躇させるべく、あらゆる軍事・外交的な策を繰り出すことであろう。

 あるいは勿論、中国と日米台の力関係が完全に逆転すれば、ウクライナに対して「兄弟民族の再団結」と称して侵略したロシアと同様の挙に出ないとは、誰も断言出来ない。

 今般のペロシ米国下院議長の訪台を契機とした大規模な軍事演習は、その取りかかりに過ぎない。かねてから習近平は「戦争の準備をせよ」と言っており、いつでも責任を日米台に転嫁させつつ、より高い段階の圧力と「台湾海峡の内水化」を強める機会を求めていた。24〜25年頃までのトンネル着工を踏まえれば、まさに今がそのタイミングであり、ペロシ氏の訪台は格好の口実とされたと言える。

 思い返してみれば、12年の尖閣事件も全く同様であった。東シナ海における現状変更を狙った中国は「周到」な準備のうえで、「日本政府が中国から島を買おうとした」という意味不明な口実や、『釣魚島白書』なる歴史的根拠を欠く作文を並べ立て、驚いた日本を全面的に平伏低頭させようとした。

 このような中国の、恫喝による現状変更、ならびに「一国二制度」強要による台湾の自由と民主への蹂躙を阻止しようとするのであれば、中国がこれ以上事態を拡大させれば必ず自らに損害が及ぶ(玩火者自焚=火遊びをする者は自らの身を焦がす)ように、日米安保の抑止力を強めるしかない。そして、「それでも中国と日米台の間には経済を中心に共通の利益があり、妥協と対話は成立しうる」という言説を疑ってかかる必要がある。

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