2022年12月6日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年8月6日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活躍。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)など多数。千葉大学客員准教授を兼務。

 ペロシ米下院議長の台湾訪問を契機に、東アジアの緊張が高まっている。中国は台湾を封鎖するかのように台湾周辺を対象とした大規模な軍事演習を実施しているほか、新型コロナウイルス検出を理由に台湾からの海産物の通関差し止めを通達するなど経済報復にも手を広げている。台湾海峡の緊張は日本など周辺国を巻き込む国際問題となっているが、その一方で見すごせないファクターが中国国内〝世論〟だ。

ペロシ下院議長の訪台に対する中国国内の反発は強まっている(AP/アフロ)

中国共産党が頻発する「人民の感情」カード

 ペロシ議長の台湾訪問は直前まで日程は正式発表されていなかった。バイデン政権も賛意を示していなかったこともあり、中国政府は訪問阻止をターゲットに強烈な圧力をかけた。外交ルートでの申し入れ、政府当局及び官製メディアの発表に加えて動員されたのが世論であった。

 7月末以後、中国のネット世論はペロシ問題で沸き返っていた。「台湾を訪問すれば、人民解放軍は座視することはない」といった記事のコメント欄には「やってしまえ」「思い上がった台湾に制裁を加えるべき」といった過激な書き込みが並ぶ。蔡英文総統が勝利した2016年の台湾総統選でも中国ネット世論は過熱したが、その時と比べても今回のほうが圧倒的に過熱しているように感じられる。

 ある知人からは「ペロシは本当に台湾に訪問するのか?」「戦争になったら日本は台湾に味方するのか」とチャットが飛んできた。随分長いこと没交渉だった相手で、前回の連絡といえば、「この日本製サプリメントを買おうかと思ってるんだけど、ニセモノじゃないかと気になって」という問い合わせであった。ちなみに日本では見たことがないエセ日本ブランドであった。

 中国共産党が「人民の感情」をカードに使うことは珍しくはない。怒った人民が自発的にボイコット運動や抗議デモを起こすもので、12年の日本政府による尖閣諸島国有化の際には、人民の自発的な抗議運動、打ち壊しが起きたことは、多くの日本人にとって忘れられない記憶ではないか。

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