2024年12月7日(土)

ザ・ジャパニーズ3.0(昭和、平成、令和) ~今の日本人に必要なアップデート~

2022年8月16日

次世代の競争についていけない日本

 本年2月、経産省の産業構造審議会においてスタートアップ企業が取り上げられた(※資料のリンクは下記)。ここでの問題意識は、日本におけるスタートアップの数が世界に比べて非常に少なく、このままでは次世代の競争についていけないという危機感である。実際、経産省はスタートアップ企業のもたらす新しい価値こそが経済成長のドライバーであり、将来の雇用、所得、財政を支える担い手だと考えているのである。ベースにあるのはGAFAM(※※)が米国の成長を牽引しているという事実である。彼らの製品やサービスは、日々の生活やビジネスの中で使わない日がないほどに浸透しており、世界的規模で成長したこの5社の時価総額の合計は、日本の全ての上場企業の時価総額の総計をも上回っている。

 ※ 第4回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 資料https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/004_03_00.pdf
 ※※ Google(現Alphabet)、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon、Microsoftの頭文字

 日本においても、これまでユニクロや楽天というスタートアップが大企業に変貌し、またLINE、メルカリのようにユニコーン企業(※※※)からIPOを果たした企業も存在する。実際、足元でユニコーンは確かに誕生している。しかしそのスピードは、米国はもちろん、中国やインドにも遠く及ばず、世界との差が開いている状況である。下の表1を見てみるとそれは一目瞭然だろう。ASEANにおいてもシンガポールは日本の彼方を行き、「後進国」と日本が思い込んでいるインドネシアにも時価総額ベースではおいて行かれている状況だ。

 ※※※ 創業10年以内のスタートアップ会社で、時価総額が10億ドルを超えるまでに成長した未上場企業

 米国では、表2のようにデカコーン(時価総額100億ドル超) ヘクトコーン(1000億ドル超)と呼ばれる企業価値の大きいメガスタートアップも存在しており、日本のスタートアップ環境は、数のみならず、大きさでも世界と差が生じている。世界で戦えるスタートアップを早急に創出しなければ日本と世界の差は開くばかりだと、経産省の資料は危機感を訴えている。

出典:CB Insightを元に筆者作成

 資料では、スタートアップ企業が誕生しない背景を、①リスク回避的な日本人の特性、②身近にロールモデルが存在しない、③家庭教育・学校教育などを挙げている。その上で、安定を求めてリスクをとらないというこれまでの経済社会の制度・慣行、組織体質の変革を含め、 政府が一歩前に出て、スタートアップが迅速かつ大きく育つ環境を整備する必要を訴えている。

 起業家の絶対数が少ないのであれば、身近にロールモデルがいないというのはその通りであろう。また親が「寄らば大樹の陰」を信奉・実践してきたのであれば、子どもにそれと真逆の教えを施すとは思えない。しかしリスクを取るマインドが醸成されれば、GAFAMクラスを日本から生み出すことに繋がるのであろうか? 私はそのように単純ではなく、根深い問題があると思う。


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