2022年8月19日(金)

ザ・ジャパニーズ3.0(昭和、平成、令和) ~今の日本人に必要なアップデート~

2022年6月30日

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桂木麻也 (かつらぎ・まや)

インベストメントバンカー

カリフォルニア大学卒業・内外の投資銀行に20年超の勤務経験を有する。クロスボーダーのM&Aに造詣が深い。著書に『ASEAN企業地図』(翔泳社)、『「選択肢」を持って「人生を経営」する』(ウェッジ)。

参院選に何が期待できるか?

 参院選である。7月10日の投開票日に向け、目下、各党の政策論争が賑やかである。ウクライナ戦争や中国のゼロコロナ政策を起因に、グローバルベースでサプライチェーンに梗塞ができており、それに未曾有の円安も加わってコスト・プッシュ型のインフレが発生している。6月24日に発表された5月の消費者物価指数は2.1%と非常に高いものになったが、電気代、ガソリン代、スーパーにおけるさまざまな商品の価格上昇は2%どころではない実感がある。過去20年超の永きに渡ってデフレの下にいたわれわれにとって、インフレの痛みのなんと大きいことであろうか。コスト・プッシュ型のインフレは、景気加熱によるディマンド・プル型インフレとは異なる。つまり給与水準が上がらない中での物価上昇なので、単に生活水準が悪化しているに過ぎない。要は日々貧しくなっているのである。

 そのような環境で迎えた参院選の公示日だが、岸田文雄首相は自民党総裁としての第一声で「有事の価格高騰だ。万全の態勢を用意していきたい。感染対策を最大限維持しながら、全国規模の観光支援策を展開するなど歩みを進める」と話した。万全の態勢と言いながら、観光支援という多くの人にお金を使わせる施策を第一に掲げるのか、と落胆する。公明党の山口那津男代表は、「補助金や税制を使い継続的に賃金が上がるよう手を打つ」と主張した。賃金が上がるのは、企業が成長し、生じた利益を内部留保に回すより従業員に還元しようと経営者が判断して初めて実現する。そんな経営者マインドを補助金や税制で変えられるものか、と思わずため息が出る。

 日本人がインフレを経験したのは、1980年代後半のいわゆるバブル時代と、1970年代の第1次・2次石油ショックの時のである。バブル期は景気加熱によるディマンド・プル型であり、今回と同様のコスト・プッシュ型を経験したのは1970年代の石油ショックまで遡る。私のようなシニア世代でも小学生の頃の話だ。その意味で、今の現役世代にとって初めて経験するコスト・プッシュ型のインフレとなる。日々貧しくなるという実感の中で、各党はどのような具体的政策で有権者にアピールするのか注目したいが、政権与党トップの発言が上の通りではあまり期待ができない。

 むしろ消費税の時限的減税を訴える立憲民主党に票が流れてしまうかもしれない。風邪をひいた時、熱が上がれば解熱剤を飲むことがあるが、解熱剤は単に熱を抑えているだけで風邪そのものを根治しているわけではない。しかし体は楽になる。消費税減税を行なっても、日本企業の収益性を上げてそこの従業員の給与水準を上昇させるには直接寄与しないのだが、痛みを取り除くための提言というものは、悲しいかな、選挙では案外受け入れられるものである。

インフレの防衛策となる副業

(AndreyPopov/gettyimages)

 そんな中、6月24日の日本経済新聞の1面に報じられた記事が目を引いた。それは「厚労省が副業解禁を企業に促す。制限なら理由を開示」というものだ。それによると、副業を認める企業は増えつつあるが、大企業ほど慎重な傾向があり、情報を開示してもらうことでさらなる普及を目指すという。働く人は、勤め先を選ぶ際に副業のしやすさが判断材料にできるようになるわけで、これが働き方の多様化につながり、雇用の流動化の後押しにもなると期待されるそうだ。副業による収入は、いうまでもなく本業収入に対するエクストラであり、コスト・プッシュ型のインフレに対する防衛としては一番理に適っている。記事によると、厚生労働省は企業に対し、従業員に副業を認める条件などの公表を求める方針だ。副業を制限する場合は、その理由を含めて開示するように促すそうである。

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