2022年12月5日(月)

#財政危機と闘います

2022年8月19日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

シルバー民主主義は乗り越えられない

 くじ引き民主主義では日本社会の縮図を再現するよう代表を選ぶとしている。そこで念頭に置かれているのが、人口構成の忠実な再現を図るもののようだ。

 しかし、本当に日本社会を忠実に再現しようとするならば、性別・年齢・学歴・居住地・親のあるなし・子のあるなし・親の年齢・子の年齢・所得/資産水準・イデオロギー・職業・婚姻の有無など非常に沢山の因子を考慮して母集団をグルーピングする必要があるが、全く現実的ではない。しかも同じグループに属する者全てが同じ選好を持つとも限らない。

 結局、無作為抽出によって、国や地域全体の人口の縮図を作り出すミニ・パブリックスが人口の縮図を再現できたとしても、本来再現されるべきはずの社会の選好を再現するのは不可能に近い。

 例えば、ミニ・パブリックスが人口構造を忠実に再現にするだけであれば、年齢によって受益・負担構造が決まっている日本の財政・社会保障制度の改革は、やはり断行されないだろう。

 専門家のレクチャーによってくじ引きで選ばれた代表が世代間格差の是正を突然実行できるようになるかと言えば、社会保障制度を所管する厚生労働省の側に世代間格差を否定する専門家がついていることもあり、期待薄だ。

政策の結果に納得できるのか

 「選挙」代表民主主義によって実現される政策が望まない結果であったとしても、全員参加の選挙という儀式を経ることで、望まない結果を共有することを強制できた。

 しかし、くじ引きでは、代表に選ばれる確率は等しいのかもしれないが、くじ引きで選ばれた本人を含め有権者全員が私たちの代表を決めるという儀式に主体的な参加ができていない。選挙の場合には私たち一人ひとりが選択の主人公であったのが、くじ引きではあたかもアルゴリズムが選択の主人公であり神の座に就くかのようだ。

 全員参加により代表を選ぶという「儀式」を省いて選ばれたくじ引き代表者が選択した結果を、私たちは受け入れられるのだろうか。所詮、アルゴリズムという私たちのあずかり知らぬところで決められた代表が選択した結果は、結局、現在の選挙代表が決めた結果と同じ「民意が反映されていない」という扱いを受けるのではないだろうか。

 「選挙」代表民主主義の欠点を補う仕組みとしてくじ引き民主主義が提案されているが、メリットとデメリットを比較衡量すれば国政レベルでの採用は非現実的だと筆者は考えるが、読者の皆さんはどう考えるだろうか。

  
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