2024年12月6日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年5月2日

 少なくとも3つのリスクが考えられる。

 第1に、予想される成長率が10%超から例えば6%に低下する場合、必要な生産資本への投資率はGDP比50%から例えば30%と、劇的に下がる。

 第2に、急成長期には貸付の急増が、不動産投資をはじめ、限界収益が低下していく投資に向けられていたので、成長率が低下すると不良債権が増える可能性が高い。

 第3に、予想される消費拡大を維持するため、国営企業を含む企業部門から家計部門への所得移転が必要となり、企業収益が減少し、投資の激減を加速しかねない。

 投資崩壊と金融混乱を招かずに成長率低下を管理することの難しさは、日本の経験が如実に物語っている。中国はいまなお絶大な潜在成長力を持っているが、今後10年が過去10年よりずっと厳しい時期になる恐れがある、と述べています。

 * * *

 中国経済が先進国に追いつき始めたので、いわゆる「自然着陸」が起こり、成長率が鈍化するのは当然ですが、上記の論調は、高度成長から低成長への移行の管理は容易ではなく、中国経済が転落する可能性がある、との分析です。

 転落とは、投資の劇的な減少と不良債権の増大ですが、分析はこれを投資崩壊と金融混乱と言っています。確かにこれは起こりうることです。中国における過剰投資は、特にインフラや生産設備について指摘されており、中国政府は経済を投資主導から消費主導に舵を切ろうとしています。論説はその舵取りがスムーズに行かない恐れがあると指摘しているのです。不良債権についても、特に政府系銀行で既に多額にのぼっていると言われており、これが成長の鈍化に伴って一層増加すると見られます。

 中国経済だけをとっても、以上の他にも、労賃の高騰、環境問題、水不足など多くの問題があり、習近平政権の経済運営は容易ではありません。

[特集] 中国経済の危うい実態

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