台湾外務省が8日に発表した、今年の国慶節(10月10日)のプロモーションビデオには「モデルT」が登場し、街路を軽快に走る姿が映されている。政府も、国産EVの誕生を喜び後押ししていることを、はっきりと示した。
商用バスは、電動バスの専門メーカー、華徳動能科技(RAC、桃園市)も生産する。台北や桃園、新竹などの路線バスでそれぞれ80~120台が運用されているほか、フィリピンのマニラで180台が活躍中。中国と対立し台湾への傾斜を強める、バルト三国のリトアニアへの輸出も検討中だ。RAC製は低床の大型バスで、電動バスでは台湾で初めて国家認証に合格した。RACには住友商事が出資している。
40年の新車100%EV化が国策
台湾紙の工商時報によると、台湾政府にとってもEV化は国策で、2040年までに新車を100%電動化するのが国家目標。50年の脱炭素化を達成するためだ。目標に向け経済省は、国内生産、基幹部品の国内開発、内需市場拡大の三つに重点を置いて、台湾のEV産業の育成を後押しする方針を表明した。
経済省によれば、台湾の車載電子機器の生産額が、早ければ25年にも6000億台湾元になるとの見通し。EVのボディーなど本体と基幹部品の生産額は4000億台湾元に拡大する見込みで、車載電子機器と合わせると、台湾に新たに1兆台湾元産業が出現する可能性が高い。
経済省工業局は現在、EVの国内生産を補助する政策の策定を進めている。毎年、完成車メーカー2社を選んで、車載電子機器など国産基幹部品を使ったEVの国内生産を支援することが骨子。国内での実績をもとに、海外の有力自動車メーカーにも、台湾製の車載電子機器の採用を促して、台湾のEV産業全体を大きく育てることを目指している。
ホンハイがEV企業アライアンス主導
経済省が想定するように、EV製造には自動車産業と電子機器産業の融合が必要だ。台湾メディアの関鍵評論網(THE・NEWS ・LENS)によれば、台湾には優勢なIT産業があり、自動車部品産業も世界の有名自動車メーカーが採用するほど評価が高いが、生産サイクルや生産思想が異なるため、実際には両者の連携は容易ではない。
この問題の解決で、電子機器産業の雄であるホンハイが世界的な旗手となっており、昨年6月には企業アライアンスによるオープンプラットフォーム「HIH」(モビリティ・イン・ハーモニー)を立ち上げた。「モビリティー産業の提携を促進するため、開かれたEVエコシステムの創造」を使命として掲げている。
HIHは、メンバー企業の架け橋として交流の敷居を下げること、イノベーションを加速すること、生産開発サイクルを短くすることなどが目標。経済日報によれば、9月現在、世界の約2400社が加盟し、14の作業チームが次世代EVや自動運転技術、モビリティー向けアプリケーションの開発など取り組んでいる。HIMは、24年にも、作業チームが開発した技術を、各メーカーが実装する動きが本格化するとみている。