2024年4月23日(火)

世界の記述

2022年10月5日

リチウムイオン電池産業も欧米輸出拡大

 EVで性能の鍵を握るのは車載用電池で、台湾に世界的な大企業はまだないものの、リチウムイオン電池産業は活発。経済省国際貿易局によると、2022年1~5月の台湾製リチウムイオン電池の輸出額は、2億8000万ドルで、前年同期比で86.1%の大幅増になった。世界各国でIT機器や電動自転車、蓄電装置の需要が拡大したためだという。

 台湾製の輸出先は米国とオランダが二大市場で、それぞれ前年同期比142.2%と359.4%の大幅増。同電池の輸出額全体に占めるシェアは、米国が21.4%、オランダが10.6%。うち米国は蓄電やバックアップ電源、車載用、オランダは電動自転車用の需要が大きかった。

 台湾企業は、車載用でも存在感を示しつつある。工商時報によれば、新興の米電気自動車メーカー、アプテラ・モーターは、ソーラー電気自動車「アプテラ」向けのリン酸鉄リチウムイオン電池の開発で、台湾塑膠工業(台湾プラスチック)傘下で新エネルギー事業を手掛ける台塑新智能科技と提携することを決めた。

 アプテラ向けに、台塑新智能の子会社が60億台湾元を投じ、発電容量2.1ギガワット時(GWh)のリン酸鉄リチウムイオン電池のセル工場を建設する計画。24年までに生産を始める。車載用リチウムイオン電池は、現在はニッケル、コバルト、マンガンを正極材料につかった「三元系」が主流だが、台塑新智能は、材料費が比較的安価で、安全性が高いリン酸鉄系が今後、主流になるとみている。

 アプテラの動力は、太陽電池と100キロワット時(kWh)の電池を組み合わせたもので、航続距離は1600キロメートルに達する。今年末に生産を始め、来年に引き渡すが、既に世界で3万台を受注。28年までに世界に9工場を建設する計画で、台塑新智能科技の車載用電池もアプテラとともに売上拡大が見込まれる。

国内普及のネックは電力の安定供給

 台湾が官民挙げて自動車の電動化にまい進する一方で、肝心の国内普及でネックとなっているのが充電施設だ。台湾メディアの「デジタイムズ」によると、台湾で乗用車の運転者のうち、EVによるガソリン車の置き換えに賛成するのは56%、EVへの買い替えを望んでいるのが51%。40%以上が、二の足を踏んでいることになる。家庭での充電が困難なことと、台湾では時々停電が起き、電力供給に不安があることが背景にある。

 台湾には、EVの充電所運営会社が13社あり、全土の充電所は約3500カ所に上るが、充電器の90%は速度が遅い交流(AC)タイプ。このほか台湾のEV市場でシェア首位のテスラが、交流充電器940基と速度が早い直流(DC)充電器150基を運営している。


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