台湾経済が絶好調だ。台湾政府で経済政策の策定などに当たる、国家発展委員会(国発会)によると、2021年の経済成長率は6.57%で11年ぶりに過去最高を更新。1人当たり国内総生産(GDP)が初めて3万ドルを超えた。行政院(内閣)やシンクタンクの予測では、今年も3.2%~4.1%の成長が見込まれ、1人当たりGDPが、長年のライバルである韓国を超えるのはほぼ確実とみられる。
世界通貨基金(IMF)が購買力平価で計算したところ、台湾の1人当たりGDPは、21年にはスイス、米国に次いで3位で、日韓を含む経済協力機構(OECD)加盟38カ国の大半を上回っている。全体の経済規模でも23年には、世界20位以内に返り咲く見通しだ。
輸出と投資好調、物価と雇用も安定
台湾経済の好調ぶりは、各種の指標で明らかだ。21年の台湾経済のけん引役は、何と言っても外需で、国発会によれば、21年の輸出受注額は、前年比26.3%増の6741億3000万ドルで史上最多。輸出額が約30%増の4464億5000万ドルだった。今年1~5月も、輸出受注額が前年同期比9.5%増の2804億6000万ドル、輸出は20.1%増の2044億8000万ドルと好調だ。
国内投資もかなり活発で、行政院によると、官民による固定資産形成投資額は昨年、前年比で約15%も増えた。特に民間の設備投資は、実質で前年比約19%も増えた。台湾積体電路製造(TSMC)など、半導体大手各社の設備投資が引き続き旺盛で、関連産業の投資拡大の呼び水ともなった。
投資が活発なのは、半導体ばかりでない。行政院は、中国進出の台湾企業(台商)の里帰り投資や、通信キャリア各社による5G(高速通信規格)ネットワークの建設、海上風力や太陽光など再生可能エネルギー発電設備の拡充、海運各社による輸送力増強なども、投資の大きな推進力になったとみている。
雇用情勢も悪くない。失業率は昨年6月に4.8%に急上昇したが、その後は低下。今年1~5月は3.6%台で、台湾の過去10年間の平均レベルで推移している。
世界各国が上昇を続ける中、物価も落ちついている。今年5月の消費者物価指数(CPI)は前年同期比3.39%上昇だったが、生鮮食品とエネルギーを除く「コアコア」では2.6%の上昇。米国など諸外国に比べればかなりマシな方だ。
台湾政府の財政収支も21年は、4年連続となる1000億台湾元(約4500億円)超の黒字。苦しい財政事情のニュースに慣れた日本人として、新鮮感すら覚える。