2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年10月11日

 ロシア軍の士気が祖国防衛戦争をしているウクライナ軍に比べて低いのは当然であり、この士気の低い30万人の兵員追加でウクライナ側が今持っている戦争の主導権を取り返しうるかは甚だ疑問と言わざるを得ない。さらに兵器・装備の損耗も大きい。

実施面でも不備が目立つ

 総動員の際に予期される国民の反発を考慮して「部分動員」にしたと思われる。しかし、部分動員にするからには、徴集される人を決めるための基準、例えば年齢の幅や軍務経験の年数などを決め発表するのが重要であるが、プーチンの大統領令にはそれが欠けている。

 30万というだけでは、ロシアには予備役の人は200万以上いるので、多くの国民が、徴兵されるのではないかとの心配を感じることになる。さらに徴兵の実施において、通常5人の子供がいる人は免除されるが、そういう人も対象にするなど、実施面でのやり方の不備が目立つ。何をしているのかとの疑問を禁じ得ない。

 戦争の行方は諸要因によって決まるが、プーチンはこれで戦争の行方を決めることはできず、国内での反戦運動も強まってくる中、今後より困った状況になるだろう。

 ウクライナの4州でのインチキ住民投票で4州を併合、そこへの攻撃はロシアの領土一体性への攻撃とみなし、核兵器を使うという事態も考えられるが、西側としては、それにけん制されないでウクライナ支援を続けていくのが正解であろう。

 1917年のロシア帝国の崩壊に至った2度の革命は、第一次大戦中、独露前線でロシア兵が戦闘を放棄して故郷に勝手に帰りはじめたのが引き金になって起こった。「兵士は足で投票した」と言われたが、その故事が思い出される。

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