これにより、極右政党が率いる右派連合が政権を獲得し、メローニが首相に就くことが確実視されている――政権発足は10月後半になるらしい。しかし、そのことはイタリアが過激な政策に傾斜することを意味しない。
焦点は経済政策
メローニがネオ・ファシストのイタリア社会運動にルーツを有することをもってファシズムを語ることは全くの誤りである。彼女はFdIを伝統的な保守の政党に脱皮させることを目指し、保守のナショナリストのアジェンダで選挙戦を戦い、その政治的立場に対する国際的な懸念を払拭することに努力したと認められる。西側陣営における揺るぎない立場とEUの統合プロセスに対する支持を表明したのはそれである。
焦点は経済である。エネルギー価格の高騰とインフレの進行でこの冬は困難に遭遇する。年内に来年度の予算編成を行う必要もあるが、減税や歳出拡大(エネルギー料金負担軽減、年金、子育て支援)の右派連合の公約もあり、野放図な財政運営となれば金融市場に跳ね返る――右派連合の勝利に反応して9月26日、国債利回りは一時4.5%近辺(2013年10月以来の高水準)まで上昇した。
EU復興基金からの支援の継続を確保するためにはドラギの改革を推進する必要があるが、メローニが主張する復興計画の改定に関するEUとの交渉が焦点となる。メローニは財務相にテクノクラートを起用することを模索しているとの報道があるが、右派連合内部での紛争を極力避けるためにも有効な策と言うべきであろう。
イタリアの安定性および西側におけるイタリアの地位の安定性に対する最大の脅威はメローニではなく、むしろサルヴィーニだとする見解がある。サルヴィーニもベルルスコーニもEUに対する立場は気紛れで信頼性を欠く。両名ともプーチンに近く、懸念を抱かせる。
メローニが両名と妥協を強いられる状況となれば有害である。その意味で、メローニが選挙で両名の党を圧倒し得たことは、彼女が少なくとも短期的には政権運営の主導権を握ることを可能とし、イタリアと西側にとって少々の朗報と言い得るのではないかと思われる。