2022年10月6日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月9日

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 9月25日に行われる予定のイタリアの総選挙では、極右政党「イタリアの同胞」(FdI)が第一党となり、同党のジョルジャ・メローニ党首(女性)が新首相に選出されると見込まれている。

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 これに関して、フィナンシャル・タイムズ紙のベン・ホールは、8月18日付け同紙掲載の論説‘The new face of Europe’s radical right is on display in Italy’で、メローニは欧州連合(EU)、大西洋同盟、ロシアと戦うウクライナへの支持を誓っているが、彼女の右派三党連立政権は欧州の懸念を招かざるを得ない、と指摘している。要旨は次の通りである。

・FdIに対する支持は2018年の選挙では4%に過ぎなかったが、以来、ドラギの政権に参加した他の右派政党の犠牲において6倍になった。メローニの選挙戦の目的は、彼女は過激主義者ではなく、彼女はイタリアの安定と欧州におけるイタリアの地位を保護するだろうと、有権者とイタリアのエスタブリッシュメントを安心させることにある。メローニは、FdIは英国の保守党、米国の共和党、あるいはイスラエルのリクードに近いと断言する英語、仏語、西語のビデオを公開した。右派連合の共通政策は大雑把であるが、EU、大西洋同盟、ロシアの侵略に対するウクライナの抵抗への支持を誓っている。

・FdIがファシスト政党であるというのは言い過ぎだが、同党にはファシストがいる。若き日のメローニがムッソリーニは優れた政治家だと称賛している映像もSNSに流れている。

・イタリアには大統領、中央銀行、財務省のような強力な独立した機関があり、ポピュリストの政治家に対するテクノクラートのガードレールとして機能している。しかし、行政権に対する最も重要なチェック機能を果たす大統領は脅威に晒されている。右派連合は憲法を改正し、フランスに類似の大統領の直接選挙制とすることを欲している。

・ムッソリーニを称賛する人物がイタリアの首相に選ばれることはEU各国に深い懸念を生むであろう。大規模な財源の裏付けのない減税、EUの復興基金によるイタリアの2000億ユーロの復興計画の「修正」は更なる懸念の材料である。メローニは規律があり分別があると自身を売り込んでいる。イタリアと欧州にとっては、三人のポピュリストの指導者から成る政府はそのようには思えないであろう。

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 メローニのFdIは傍流の政党だった。選挙に勝って首相に就任する見通しとなるに及んで、彼女は自らの政党を伝統的な保守の政党に衣替えし、その政治的立場に対する国際的な懸念を払拭することに努力している様子である。

 8月11日に公開されたビデオ(彼女は仏語、英語、西語を流暢に話している)で、彼女は次の諸点を述べている。

*ファシズムについて:「イタリアの右派は既に数十年の間ファシズムは歴史に手渡してしまっており、民主主義の抑圧と恥ずべき反ユダヤ法を紛れもなく糾弾している」。われわれは確固たる言葉をもって反民主主義的な如何なる漂流にも強烈に反対している。

*EUについて:右派の勝利は惨事であり権威主義への転向、ユーロからの離脱に至る、あるいはその他のナンセンスが言われている。どれも真実ではない。ドラギ政権によって敷かれたEU復興基金へのアクセスのロードマップを危険に晒すことはしない。

*ウクライナについて:「西側陣営におけるわれわれの立場には一点の曇りもない。われわれはウクライナに対するロシアの残忍な侵略を、何の躊躇もなく、糾弾し、欧州および国際場裏におけるイタリアの立場の強化を野党の立場から助けて来た」。

*政治的立場について:「私は欧州議会の欧州保守改革党を率いて来たが、この党は英国の保守党、米国の共和党、イスラエルのリクードと価値観を共有している」。

 これらは、いずれも結構である。しかし、問題は、これが本心ではないかもしれないという点だ。8月11日に公表された右派三党の共通政策も欧州統合の支持、北大西洋条約機構(NATO)のコミットメントの尊重、ウクライナ支持を謳っているが、同盟のサルヴィーニがユーロからの離脱を主張し、プーチンを称賛し、ウクライナへの武器支援に反対したばかりだ。

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