2022年12月4日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年8月5日

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 イタリアのドラギ政権が崩壊した。7月14日、食料・エネルギー価格の高騰とインフレに対処するための260億ユーロの支援パッケージについて上院で投票が行われたが(下院では可決済み)、連立の一角を占める「五つ星運動」がこの投票をボイコットした――パッケージ自体は議席数321のうち172の賛成票を得て可決された。ドラギは、同日、この政権を継続する条件はもはや存在しないとして辞意を表明し、政治危機が再燃することとなった。

seungyeon kim/Stock/Getty Images Plus

 マッタレッラ大統領の意向を受けて、ドラギは7月20日に議会で演説し、政権継続の可能性を探り信任投票が行われたものの、「五つ星運動」、極右「同盟」、中道右派「フォルツァ・イタリア」が棄権し、結局、信任されなかった。連立政権の崩壊を受け、マッタレッラ大統領は議会を解散、9月に総選挙が行われることとなった。

 ウクライナ戦争、ロシアによるガス供給停止の脅威、インフレ、コロナウイルス、あるいは政治危機を反映した国債利回りの上昇という緊迫した状況にあるので、政治空白の期間における混乱は避けられないであろう。来年度の予算編成あるいはEUの復興基金から次のディスバースを得るために必要な改革にも支障が生ずるかも知れない。

 今回の政治危機の引き金を引いた「五つ星運動」は2018年3月の総選挙で最大政党として登場したが、当時の支持率33%は今や13%程度にまで低下している。18年以来4年間、政権の一角に常に位置して来たが、その間に貧困解消と格差是正を旗印とする反エスタブリッシュメントの勢いを削がれ、内部の路線対立もあって多くの離党者を出し、党勢の衰えから来る混迷の状態にある。

 去る6月21日には、外相のディ・マイオ(五つ星運動)がドラギのウクライナ支持政策に反対する党首のジュゼッペ・コンテ――彼はウクライナに対する武器支援は戦争を長引かせるだけだとも主張している――は無責任で未熟であると非難して、約60人とともに党を離脱し新党(未来に向けてともに)を結成するに至った――もっとも、ディ・マイオの行動が単純に外交政策に起因するとは言い切れず、沈む船から早きに及んで逃げ出したい心理も働いたであろう。

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