2024年12月11日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年8月2日

 7月18日付のニューヨーク・タイムズ紙に、タチアナ・スタノヴァヤ(カーネギー国際平和財団研究員)が、プーチン大統領はウクライナ戦争はすべて計画通り進行していると信じていることを論じるとともに、彼の三つの目標を解説する一文を寄稿している。

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 筆者であるロシアの女性研究者タチアナ・スタノヴァヤが、プーチン政権とどういう位置関係にあるのか承知しないが、これは「プーチンは勝ちつつあると考えている」という刺激的な表題の論説である。スタノヴァヤが解説するプーチンの3つの目標とは、
①ドネツクとルハンスク地域およびクリミアへのアクセスを確保する陸の回廊を支配すること。
②キーウに降伏を強いる、すなわち、「非ウクライナ化」および「ロシア化」をウクライナ全土で進め現政権を倒すこと。
③新しい世界秩序を構築する、プーチンにとって「良い西側」と協力すること。
である。

 プーチンの三番目の目標として書かれている新たな世界秩序の構築を除けば、ウクライナ戦争に係わるプーチンの思考として書かれていることに意外なことはない。日々報じられていることに照らし合わせれば、ウクライナにおける領土的野心というプーチンの第一の目標、およびウクライナの降伏を強いるという第二の目標の達成に向けて、事態は進展しつつあるように見える。

 プーチンが「すべては計画通りである」と自信を持っても不思議ではない。占領地域で「非ウクライナ化」、「ロシア化」(ルーブルの流通、国籍の付与など)に着手している様子も報じられている。詳細は分からないが、ウクライナのゼレンスキー大統領が、検事総長と保安局(情報機関)長官を、部下がロシア側に協力していることを理由として解任したことも思わしいニュースではない。

 意外なことという訳ではないが、注目すべきは、この論説には交渉に一切の言及がないことである。プーチンには交渉するつもりはないと思われる。西側は、戦争はいずれ交渉で終わらせる必要があるとの見方で一致しているが、プーチンは一、二年のうちにウクライナが戦争の圧力で自壊し降伏するのを待つであろうとの観測には信憑性があると思われる。


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