2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年8月5日

 なお、政治専門誌Politicoが報ずる7月9日時点の主要政党の支持率は次の通りである。イタリアの同胞:23%、民主党:22%、同盟:15%、五つ星運動:11%、フォルツァ・イタリア:8%。

厭戦を党利党略に

 懸念すべきことの一つは、五つ星運動の党首ジュゼッペ・コンテは市民のウクライナ疲れを焚きつけることをして党勢の挽回を図ろうとしているように見えることである。ウクライナ戦争に起因する悪影響が加わって市民生活を圧迫し、国内問題に転化するに至り、呉越同舟の連立内部の動揺を誘っているが、コンテはドラギが市民生活を守るために十分なことをしていないとして諸々の要求をドラギに突きつけて来た経緯がある。

 欧州に対するガス供給の停止を仄めかすロシアの狙いは、市民生活を圧迫し、市民のウクライナ疲れと厭戦気分を醸成し、更には欧州の分断を図ることにあると考えられるが、イタリアは殊に脆弱な状況にある。政治状況は既に十分脆弱であるが、市民生活の圧迫を党利党略に利用する政党があれば、状況は更に悪化するであろう。

 ドラギが退陣に追い込まれ、総選挙が行われるに至った状況では、イタリアはロシアの工作の格好の対象となろう。本来は政治家ではなくフィレンツェ大学の無名の教授であったコンテ(彼は18年に五つ星運動と同盟の連立政権の首相に請われて就任以来、ドラギ政権誕生まで首相を務めた)が何故にこのような行動に出ているのか理解出来ないが、無責任の誹りを免れないであろう。

   
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