2022年12月6日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月9日

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 共通政策には右派の理念であるフラット・タックス(均一レート税)の拡充が盛り込まれている。そのような財源の裏付けのない減税はEUのルールとの整合性の問題を惹起し、市場の動揺を招くかも知れない。また、共通政策はドラギ政権がEUと合意した復興基金に基づく計画を、ウクライナ戦争に起因する「変化したニーズ、条件および優先度」に従って修正することを提案している。

 この提案には一定の理屈があるのかも知れないが(エネルギー価格の上昇やインフレの昂進)、修正の内容は明らかでない。復興基金の資金は欲しく、誰しも手荒な真似は出来ないかも知れないが、もし、ドラギの構造改革を骨抜きにするようなものであれば、EUとの交渉は難航必至であり、復興基金のディスバースは滞ることになろう。

憲法改正も視野か

 市場の「分断化」(ユーロ圏諸国間の国債利回りの乖離)を抑制するために欧州中銀が導入したTPIと呼称される国債購入ファシリティのイタリア向けの発動も出来ないであろう。

 上記の論説は右派三党連立政権が直接選挙制による大統領の制度に移行する憲法改正を狙うであろうことを指摘している。現行の制度(議会の上下両院合同会議において、全議員と各州議会から任命された選挙人が選出)による大統領は政治危機の克服に当たり、最後の拠り所の役割を果たしてきたが、分裂気味のイタリア政治の最低限の安定を確保する上で、現行の制度を置き換えることが賢明かどうかは慎重な考慮を要しよう。

 メローニは彼女のソフトなイメージを国内的・国際的に売り込んでいる。政権当初は巧く立ち回れるかも知れない。しかし、厳しい選択を迫られる段階に至った時、イタリアが必要とする改革を推進する意思と政治力(連立相手の同盟・と思惑が一致する保証はない)を問われることとなろう。

  
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