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世界の記述

2022年5月23日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

在欧ジャーナリスト。1976年生まれ。スペイン・バルセロナ大学大学院でジャーナリズム修士。『卵子探しています』(小学館)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞。『安楽死を遂げるまで』(同)で講談社ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ・外国人ぎらい』(PHP新書)がある。
 

Leestat / iStock / Getty Images Plus

 ロシア国営の天然ガス大手ガスプロムは4月27日、ルーブル建てでの支払いを拒否したポーランドとブルガリアに対し、対抗措置として、両国へガス供給停止を通知した。ロシア産の天然ガスに依存してきた欧州連合(EU)は苦境に立たされている。

 ガスプロムの供給停止について、EUのフォンデアライエン欧州委員長は、「ロシアの脅しだ」と述べ、「EU加盟国は団結し、この挑発に立ち向かう」と語った。

 英調査会社オックスフォード・エコノミクスによると、ロシア産天然ガスの依存度は、ポーランドが55%、ブルガリアが75%。そのほか、ドイツは65%、イタリアは43%と高く、フランスは17%と比較的低いようだ。

 ドイツのショルツ首相は、3月23日、「ロシア産の原油と天然ガスから一刻も早く手を引かなくてはならない」と警戒。だが、「今日明日に実現できることではない」と述べた。

 仏シンクタンク「ジャック・ドロール研究所」のトマ・ペルラン所長は、ラジオ局『フランス・アンフォ』で、ロシア産天然ガスに依存する国の中でも、北欧諸国は特徴が異なることを説明した。

 「フィンランドは、大半の天然ガスがロシア産だが、1990年代から代替エネルギーによる生活様式を確立してきたため、天然ガス依存度自体がフランスよりも低い」

 またエネルギー問題専門のニコラス・ゴールドバーグ氏は、同ラジオで「天然ガスは、物理的な線(パイプライン)で繋がっているため、(EUは)ロシア以外からの輸入が困難」と指摘。液化天然ガス(LNG)になっても、「2021年9月から需要が急増しており、余裕がない」との現状を明かした。

 欧州各国のメディアは、天然ガス問題の解決策を主に2点挙げているが、どれも先行きは不透明だ。

 1点目は「輸入先の変更」だが、代替先のノルウェーとアルジェリアの産出量は「限界に達している」との見方がある。また、米国からLNGの輸入が保障されているが、ロシア輸入の10分の1の量に過ぎないとも報じている。

 2点目は、「節約」だ。1973年のオイルショック後に起きた節電対策を思い出し、「国民の意識改革」が必要だとする論調がある。

 EU加盟国は3月、2027年までにロシアからの化石燃料輸入をゼロにする方針で合意。石炭は8月から輸入禁止となり、石油についてもEUは年内の輸入禁止を目指している。調達先を増やし、再生可能エネルギーへの移行を加速させる考えだ。

 しかし、前出のペルラン所長は、エネルギー資源確保に向けたEUの対策について、当惑の色を見せた。「方向性は正しいが、遅すぎる。今より10倍のスピードで対応すべきだ」と警鐘を鳴らした。

 
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