仏ル・モンド紙コラムニストのシルヴィ・カウフマンが、ロシアのウクライナ侵攻で、欧州連合(EU)内の力学が変化している旨を、2022年8月30日の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)で書いている。
ロシアのウクライナ侵攻の結果、EU内の力学は変わりつつある。ソ連の占領下にあった加盟国及びウクライナとロシアに地理的に近い加盟国の見解は、今日、従来以上に真剣に受け取られている。
この傾向はロシア人に対する入国ビザの禁止を巡る議論に明瞭である。ポーランド、フィンランド、チェコおよびバルト三国は、禁止を支持した。ドイツはこの禁止に反対した。リトアニアは、合意が得られなければ、地域的な合意を作ると脅かし、結局、独仏両国は妥協に向けて動くこととなった。ポーランドとバルト三国は今やフィンランドやスウェーデンのような北欧諸国を当てにすることが可能で、独仏両国は守勢に回っている。
今年になって、独仏首脳は共に厳しい批判に直面した。ドイツはウクライナへの武器送達を躊躇したこと、フランスはプーチンとの電話会談を続けることに固執したことである。両者とも、とりあえず、ウクライナを軍事的に支持するとのコミットメントを再確認する必要を感じた。
しかし、EUがウクライナを含む新たな加盟国を統合するという仕事に取り組んでいる折、ドイツのショルツ首相は、プラハで、EUの多数決への「漸進的な移行」を呼び掛けた。独仏両首脳は、これに反対するポーランドに抵抗する十分な力はあると思っている。
もう一つ潜在的な不確定要素がある。9月25日のイタリアの選挙で極右が勝てば、欧州の変動する力学は更なる変化を見ることとなろう。
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8月31日にプラハで開催された非公式EU外相理事会は、ロシアとの間の2007年のビザ発給円滑化協定を停止することを決定した。ロシアのウクライナ侵攻以降、EUに流入したロシア人旅行者は100万人に達するが、大多数はフィンランド(33万3000人)、エストニア(23万4000人)、リトアニア(13万2000人)経由でEUに流入した。ロシアとの間の空路は閉ざされているとされているのも、その所以であろう。