2024年6月16日(日)

WEDGE SPECIAL OPINION

2022年10月22日

防衛費を増額すれば解決するのか?

 日本はどうすればコルビー氏の期待に応え、対中抑止力を強化することができるだろうか。まず、防衛費の増額については、すでに日本政府の既定方針となっている。今後5年ほどで対GDP比2%近くまで伸びるであろう。しかも、ウクライナ侵略を目の当たりにして、各種世論調査では過半数の日本人が増額を支持するようになっている。この世論の支持は政府にとって得がたい〝戦略的資産〟である。

 しかし、防衛費は増やせばいいというわけではない。それを効率的に使い、抑止力を強化することがなによりも重要である。コルビー氏が日本に求めているのは「拒否的抑止力」、つまり中国の攻撃を無効化・限定化する能力の強化である。具体的にはミサイル防衛、対艦ミサイルや潜水艦、基地の抗堪性、そして弾薬や燃料などの継戦能力である。

 日本政府はすでに拒否的抑止力の強化に取り組み始めており、ミサイル防衛に関してはイージス・アショアの配備断念によって新たにイージス搭載艦の建造が進められようとしている。これは自衛隊史上最も高額な装備になることは間違いない。だが、最終的にいくらかかるかわからない代物である。このため、費用対効果の面から見直しが望ましい。米国はグアムに固定式ではなく移動式のイージス・アショアの配備を計画しており、日本も同様のシステムを追求するべきである。

 拒否的抑止力には「敵基地攻撃能力」あるいは「反撃能力」も含まれるが、それは移動式のミサイル発射台を破壊するためではなく、滑走路や港湾施設を攻撃して人民解放軍の爆撃能力や封鎖能力を無力化するために必要となる。そのためには、現在政府が考えている対艦巡航ミサイルの射程延長ではなく、飛翔時間も短く破壊力も大きい中距離弾道ミサイルを導入しなければならない。すでに開発が始まっている極超音速滑空兵器も反撃能力として使えるが、中国が1000発以上の中距離ミサイルを配備していることを考えれば、早急に数をそろえて「ミサイル・ギャップ」を埋める必要がある。

 以上の措置は、日本の〝ヤマアラシ化〟と換言してもいい。敵に太く長い針で反撃をするヤマアラシは長年、台湾の防衛に例えられ、現在も台湾のヤマアラシ化が進められようとしている。同じ第一列島線に位置する日本は、これまで短く弱い針しか持たないいわばハリネズミであったが、今こそヤマアラシにならなければ手遅れになる──。これこそが日本人が耳を傾けるべきコルビー氏の警告である。

 
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