2024年4月26日(金)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2022年10月30日

リピーター戦略

 さて、未曽有の円安が続いてる。為替ばかりは、いくら嘆いてもどうすることもできないが、インバウンドが増えることは確かだ。そうであれば、彼らをいかにリピーターにするか、ということがポイントになる。円安で「割安だから来て」という姿勢では、このチャンスを逃すことになる。

 老舗旅館には「掛け軸」のリストが置いてある。各部屋に有名な掛け軸があるのだが、「見たければ、また今度泊まりに来てください」というしかけになっているのだ。あからさまにリピートをお願いするのではない、このさりげなさが、京都文化の強さであるように思える。

(thavornc/gettyimages)

安いニッポンからの脱却

 インバウンドが増えることに乗じて、むしろ値上げをするべきだろう。円安(ドル高)でも外国人旅行者に「安くない」と感じさせる。それだけ価値のある商品、サービスであるということをイメージさせるためだ。

 今回、私は旅行代理店経由で老舗旅館を予約したが、中にはインターネット予約をしていないところもある。これも逆転の発想だ。アクセスできる窓口を狭くすることでむしろ価値を上げているのだ。

 さて、最後に私から提言したい。今回、3つの老舗旅館に三連泊したのだが、費用は平均して10万円。日本感覚で言えば、確かに高い。しかし、前回原稿でも書いた通り、先月、私はサンフランシスコに逗留してきた。老舗旅館ほどのクオリティが全くないにもかかわらず、値段は高いのだ。もちろん、円安の影響もある。

 しかし、日本の価値あるサービスや商品が「安売り」されているのではないか? と私には感じられるのだ。価格決定権を顧客に渡すのではなく、自分たちで値決めをして、その価値を伝えていく。これは日本全体で、価格戦略を見直すべきだろう。私の経験でも、レアメタルを使った新素材、加工といった「技術分野」で、日本は安売りをしてきた。今こそ自発的なインフレについて考えてみるべきだ。

   
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