本FTの記事は、中国が台湾侵攻を目指して如何なる軍事訓練を行っているかを論じつつも、他方、経済面で制裁を科すことこそが中国の台湾侵攻を抑止する最も有効な方策となると述べている。
考慮すべき軍事、政治、経済での対応策
軍事、政治面での抑止よりも、経済面での制裁こそが中国の侵攻を止めさせる上で効果が大きいという論者の見方には、全面的には賛同しがたい面がある。しかし、いずれにせよ、中国としては、台湾を締め上げる方策をみつけるために種々の方策を試しつつある、と見るべきであり、それに対処するためには軍事、政治、経済などを含む、種々の面での対応策を考慮しておく必要がある。
最近の中国の台湾に対する強硬姿勢は、台湾のことを「核心的利益の中の核心問題」であるとの趣旨の王毅外相の談話に良く示されている。国家主席として3期目を開始した習近平にとっては、台湾問題はメンツにかかわる問題となっており、何とか見るべき成果を上げたいところであろう。
これに対して、蔡英文総統は、10月10日の「建国記念日」において、「台湾の民主主義を見くびってはいけない」と主張した上で、「軍事衝突は台湾にとっても中国にとっても決して取るべき選択肢ではない。台湾人民の主権と民主、自由を守ることだけが良好な交流を再開する源となる」として、独善的で強圧的な習近平政権を牽制している。
蔡英文にとって、台湾は主権の確立した国家(中華民国または台湾)であり、中国との間では、現状維持路線を貫くという姿勢に変わりはない、との方針を明確にしている。中国共産党の党大会では、習近平が、台湾問題について、武力による統一も辞さない姿勢を示し、強硬路線を貫く姿勢を打ち出したところだ。台湾危機は収まる気配がない。
今年暗殺された安倍晋三元首相が昨年述べた通り、「台湾有事は日本の有事」であり、日本も有事が起きないような抑止力を高める具体策を早急に講じる必要があろう。