2022年12月9日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年10月24日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活躍。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)など多数。千葉大学客員准教授を兼務。

 14億人の中国を支配する7人……、第3期習近平体制の最高指導陣である中国共産党中央政治局常務委員の顔ぶれが発表された。さまざまな予測、噂、リークが飛び交っていたが、中国共産党党大会、一中全会(第1回中央委員会全体会議)後に明らかとなった人事は、ほとんどの予測を裏切る結果となった。

 中国共産党指導部には、党大会時点で68歳以上は引退、67歳以下ならば次の党大会まで現役という、「七上八下」と呼ばれる慣例がある。習近平総書記がこの慣例を破って再任することはすでに確実視されていたが、まだ67歳の李克強首相が引退に追い込まれたのはサプライズだ。全人代(全国人民代表大会)委員長など、実権の少ないポストに回されるとの予測が有力だった。

 また、実務派官僚の大物として知られる汪洋・政協(全国政治協商会議)主席も67歳での引退となったほか、次期首相の最有力候補とも見られてきた胡春華副総理は常務委員に入るどころか、その下のランクにあたる政治局委員にすら入っていない。

胡錦濤前総書記が会場から警備員に連れ出される一場面は習近平総書記の集権体制が確立したことを物語ると言っても過言ではない(ロイター/アフロ)

 李克強、汪洋、胡春華はいずれも胡錦濤前総書記と関係が深い、いわゆる団派(中国共産主義青年団でのキャリアを持つ政治グループ)とされる。団派を廃して、習近平総書記と関係が深い人物を引き上げたのが今回の人事の特徴だ。

 党大会の最終日には胡錦濤前総書記が会場から警備員に連れ出されるという一幕もあった。中国国営通信社・新華社の英語版がツイッターで伝えたところによると、体調不良だったという。しかしながら、団派潰滅の人事とあわせると、不穏な匂いを感じないほうが不自然であろう。連れ出される胡錦濤の写真は、歴史的な場面として記憶されるはずだ。

習近平はいつから皇帝に?

 習近平圧勝の人事によって、「習近平の権力が盤石に」「ついに皇帝になった」云々と報道されるのではないかと予測しているが、こうした見出しには次のように聞きたくなってしまう。

 「あれ? 今までは盤石じゃなかったんでしたっけ?」

 「皇帝になった? 今までは違ったんですか?」

 こういう嫌みな質問をすぐに思いついてしまうのは、自分自身がこの問いに正しく答える自信がなく、長らくうじうじと考えているからである。

 振り返ってみると、2015年時点ではすでに皇帝への道は見えていた。同年出版の拙著『なぜ、習近平は激怒したのか』(祥伝社新書)では、習近平が3期目以降も続投すると予測している。日本語の出版物ではもっとも早い段階で長期政権を予測していると自慢させて欲しい。

 習近平の各種政策、とりわけ高官までも摘発した反汚職運動の徹底ぶりから導き出した予測だ。結果的に正しかったわけだが、「断言して大丈夫かしら」との不安がなかったわけではない。

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