極右連合の分裂を画策か
しかし、極右の台頭はネタニヤフ氏にとっては両刃の剣だ。ベングビール、スモトリッチ両氏の協力なしでは政権発足ができず、従って自身の汚職裁判にも影響力を及ぼすことがかなわない。かといって、両者を閣僚に就ければ、極右思想のまま暴走しかねない。
「公共治安相」や「国防相」という国家の存亡にかかわる重要ポストを素人政治家には到底任せられないだろう。ネタニヤフ氏はハムレットのような心境ではないか。
このためネタニヤフ氏は「勝ち過ぎた両者の処遇に苦慮している」というのが一般的な見方だ。地元有力紙ハーレツ紙によると、同氏はこれまで政権を樹立させる時には、穏健派の有力者を閣僚の1人に据えてきた。例えば、09年には反ネタニヤフ派の労働党の指導者バラク氏を国防相に指名したケースのようにだ。
これはネタニヤフ氏独特の手法で、政権内の強硬派と穏健派で激論を交わさせ、最後は同氏がその間を取るように実践的な政策を決めるという巧妙なやり方だという。だが、今回は最初から穏健派を招けば、極右がこれを拒否し、政権そのものの発足が困難になる可能性が強い。
このため、ベングビール、スモトリッチ両氏を入閣させてとりあえず政権を発足させ、汚職裁判を有利にするように司法制度改革に着手。数カ月後に両氏の極右連合を分裂させ、ベングビール氏を閣僚から外してしまう。その後釜に中道のガンツ国防相を迎えるというシナリオが想定されるという。ガンツ氏の政党「国家の団結」は12議席を獲得している。
利用できる者は利用し、価値がなくなれば捨てるというやり方が実際に行われるかどうかは全く不明だが、ネタニヤフ氏が15年にわたって続けてきた権謀術数を振り返ると、あながち単なる陰謀論とも言い切れまい。蘇った同氏の真骨頂がどう発揮されるのか、見物ではある。