2022年12月9日(金)

新しい〝付加価値〟最前線

2022年11月19日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

1961年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、同理工学研究科修了。大手メーカーにて商品開発・企画を担当後、独立。現在、商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。

フランスが作った炊飯器、ティファールの「ザ・ライス」

 初めて話を聞いた時は驚いた。フランスブランドのティファールが、高級炊飯器を作り、日本市場で販売するというのだ。フランスはベトナム、ラオス、カンボジアなど南アジアの米食圏 に強い結びつきがある。当然、ティファールとしてもお得意様。そこで販売されるティファールのラインナップには、炊飯器も含まれており、今までに1億台(!)近くを販売してきたという。

「ザ・ライス」

 しかし、それは長米。含水率の高い短米、ジャポニカ米とは異なる。しかも、この高級炊飯器分野、日本の大手メーカーが、惜しみなく開発費、技術を注いだ日本のお宝家電ともいえる。インタビューしたところ、ティファールは、日本市場と高級炊飯器をよく十分知っていた。実は、日本の炊飯器市場は、安い炊飯器ではなく、高い炊飯器が売れる、通常のマーケットとはちょっと違う市場。

 さて、今の高級炊飯器は「IHヒーター」「蓄熱性の高い内釜」、そして水分コントロールを短時間で確実にできる「圧力システム」の3つの技術を駆使して作られている。ただし、この分野の創始社である三菱電機では「圧力システム」を使っていない。うなずけるところもある。「圧力システム」が使われ始めた時は芯までふにゃふにゃの炊き上がりをしているモデルが多かった。極度に柔らかめのおコメだ。今は、そんなところは改められているが、三菱電機は、これをきらった。おコメは、粒、一つひとつが美味しいことも重要だが、塊で食べても美味しいことが要求される。いわゆる「かきこんで、たらふく食う」感覚だが、これが柔らかすぎるとかきこめない。

 多くの圧力なべを売り、電気圧力なべ「Cook 4 me」などを販売しているティファールだが、この「ザ・ライス」に圧力システムを搭載していない。技術は十分持っているが、採用しなかった。圧力を使わなかったのは、歯ごたえをしっかり、よくするためだ。一粒一粒より全体の美味しさを重視したわけだ。また他社との差別化も大いに考慮したという。

内釜ふた。遠赤外線を出すコイルヒーターが見える。直接触れられない様、強化ガラスで覆われている

 採用したのは「IHヒーター」「蓄熱性の高い内釜」。内釜も「炭」「土鍋」ではなく得意の素材「鉄」系で対応している。やや深めが当たり前の内釜は、浅い独特の形状で、かなり特殊だ。そして、内ぶたには、遠赤外線ヒーターを仕込み。日本メーカー同様、熱ですっぽり覆う形に仕上げている。

 標準で炊くと、やや硬めの炊き上がりになる。味より、喉越しに重きを置いた感じだ。中までの水の入り方、硬さ、味、などのバランスがよく、粒としても美味しい上、いくらでもかきこめ、食味は素晴らしい。

 形、操作系はオーソドックス。ただ、操作系は、日本メーカーのようなこなれ感はない。日本メーカーの使用感をゲーム機だとしたら、ティファールの使用感は、PCのようだ。必ずルールを守ってくださいと言う感じ。それでも、後少しで、日本メーカー並みの使いやすさになる予感がする。

 日本の高級炊飯器市場に打って出たティファール。この分野、中国メーカーも狙っているが、フランスが先に来た格好だ。

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