プーチンは米国の動きを容認
上述のように、ISAFのアフガニスタンからの2014年の撤退およびアフガニスタン政府への治安権限移譲計画は2011年12月に決定されており、それに併せて米軍も撤退となるが、その際、撤退以降も国際社会がアフガニスタンに対する支援を続けていくことで一致していた。そして、米軍は完全撤退ではなく、小規模の軍事施設をアフガニスタン残していく模様だ。
治安の維持はアフガニスタン側に委ねるものの、米国は2~3万人規模の部隊を訓練などの名目で引き続き駐留させたいとしてきた。アフガニスタンのカルザイ大統領もこの米国の意向に好意的で、国民大会議ロヤジルガから、2014年以降も10年間、米軍駐留の継続を認めるという基本合意を取り付けていた。しかし、内政不干渉や夜間捜索の禁止など、大統領が提示した条件を巡り、米国との折り合いがつかずにいた。だが、同大統領は、今年の5月9日には、具体的にISAF撤退後も、米国がアフガニスタン国内9カ所に軍事基地を維持することに同意する、と発表したのである。
他方、アフガニスタン軍の空軍力が極めて弱いことが憂慮され、今年4月23日には、米軍司令部が、撤退後も米軍の武装無人機が引き続き現地で展開することを確認している。無人機は、米国ネヴァダ州やニューメキシコ州の空軍基地から操縦される可能性が最も高いと言う。同時に、無人偵察機が米国からアフガニスタン政府に売却されることも最近合意されている。
ロシアのアナリストには、米軍の残留により、ロシア包囲網が形成されたり、アフガニスタンが不沈空母と化したり可能性があると警鐘をならすものもいるが、実際には、ロシア首脳陣は沈黙を貫いており、暗黙の了承であるとみてとれる。
漁夫の利を得ようとするロシア
実際、プーチン首相は、2012年2月にアフガニスタンから米国の軍事物資を運び出すための、ロシア・米共同輸送センターになったウリヤノフスクでの、精鋭とされるロシアの降下部隊兵士に対する演説で、ロシアの南の国境が平和であることの重要性を説くと共に、ロシアが彼ら(米国と同盟軍)を助ける必要があること、そして、彼らに戦ってもらうことこそがロシアの国益にかなうと述べた。さらに、「米国はタリバンを滅ぼす責任を受け入れたのであり、米軍はその使命を果たすまでアフガニスタンに留まるべきである」とまで述べ、アフガニスタンでの米国主導の作戦への明確な支持を表明していた。