2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2022年11月18日

Jリーグ発足30年で競技人口の分布も変化 

 W杯によるサッカー熱への高まりは、観戦だけでなく、自らプレーすることへも期待される。世界の頂を目指そうと、各国の一流選手がしのぎを削って戦う姿は、部活動などで鍛錬を積む現役の中高生から、休みの日にサッカーやフットサルに興じるビジネスパーソンらと、幅広い〝サッカー人〟に大きな刺激を与える。そうした時に「心機一転に」や「久しぶりに」といった動機でサッカーシューズなどを購入することもあるだろう。

 こうした潮流を見込み、国内外のスポーツメーカーも新商品をリリースしている。ミズノの「MIZUNO α(ミズノ アルファ)」シリーズやアシックスの「GLORY GOLD COLLECTION(グローリーゴールドコレクション)」といったものだ。どれもW杯に出場する国内外の代表選手らが着用するモデルとして売り出している。

 ただ、この競技としての商品市場も変化が訪れつつある。少子高齢化による人口減少やスポーツ競技と娯楽の多様化によりサッカーの競技人口は減少傾向となっているからだ。日本サッカー協会(JFA)のサッカー選手登録数は2014年度の96万4328人をピークに21年度には82万6906人へと減少。これに対して、40歳以上を示すシニアは14年度の2万4935人から4万1898人と増加している。

サッカー少年少女の「お父さん」という新たな市場

 こうした競技人口動態の変化に注目したのがスポーツ用品大手のデサントジャパンが展開するサッカーブランド「アンブロ(umbro)」だ。この夏、指導者用のウエアカテゴリー「アンブロ コーチャーズ(COACHERS)」を立ち上げた。指導者向けというのは、これまで日本のメーカーが手掛けていなかった分野という。

指導者用のウエア「アンブロ コーチャーズ(COACHERS)」

 アンブロがこの分野に目を付けたのは、サッカーの競技人口が減っているのに対し、指導者の数が増えているためだ。JFAのサッカー指導者登録数は14年度の7万6536人から21年度の8万4929人へと増加している。多くが子どもたちにサッカーの楽しさを教えるD級ライセンスやアマチュアレベルの選手たちにサッカーの原理原則を教えるC級ライセンスの人たちで、全体の9割を占める。

 「こうしたD級やC級のライセンス保持者は、子どもがサッカーを始めたのをきっかけに所属するチームのコーチとして手伝おうとする『お父さんたち』が多い」とデサントジャパンアンブロマーケティング課の島村隆宏氏は語る。

 アンブロが狙うのはこうした「お父さんたち」の層だ。サッカー用のウエアを持ち合わせていなく、「安価なカジュアルウエアや作業服等で代用している人も多い」という状況だと島村氏は話す。市場が広がっている中で需要は高い。さらに、代表やJリーグなどのトップチームを指導できるS級やA級ライセンス保持者は所属するチームや個人へのスポンサー契約で使えるメーカーが決まってしまっているのに対し、地域の少年サッカーチームの指導者らは自由に選ぶことができるため、ニーズにこたえた商品づくりをすることが肝心だと考えた。


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