2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年1月6日

 12月4日、イランの検事総長が道徳警察の廃止に言及し、また、ヒジャブ着用規定についても見直しが進められているという報道が流れている。しかし、この体制側の譲歩について、今回の反政府デモでいよいよイスラム革命体制がぐらつき、譲歩を強いられたと考えるのは早計であろう。

デモの限界を見透かすイラン当局

 むしろ、12月初めにクルド人地域で革命防衛隊がかなり強硬な反体制デモ弾圧を行い、9日には反体制デモ関係者1名が処刑されたことに見られるように、体制側は反体制デモの限界を見極めた上で、事態の収拾に動き始めたと見られる。今回の道徳警察の廃止も、反体制デモからデモのきっかけとなった女性達を引き離す効果を狙っての戦術と思われる。

 反体制デモ側は、12月5日から全土で3日間のゼネストを呼びかけ、バザール(市場)の商店が閉まっている写真が一部の西側メディアで取り上げられているが、それ以上のニュースになっていない。西側メデイアの期待と裏腹に、全国的なゼネストは失敗したのであろう。

 40年以上かけて構築されたイスラム革命体制が今回の反政府デモで倒れると思うのは希望的観測に過ぎない。もちろん、国民をあからさまに抑圧する現在の保守強硬派一色に染まった独裁体制が、永遠に続くとも思えないが、今はその時ではない。

 なお、保守強硬派のアフマディネジャド元大統領が、保守強硬派の支持者を裏切って、より広汎な個人の自由と道徳警察の廃止を訴えているらしいが、元大統領の真意は不明である。そもそも今回の反体制デモのきっかけとなった道徳警察は、同元大統領の時代に設置されたものである。

   
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