2022年12月9日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年11月23日

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 Economist誌10月29日号の社説は、「イランの反体制デモは、女性を中心に過去に例の無い強さでイラン・イスラム革命体制の打倒に立ち上がっている。他方、反体制デモは指導者を欠き、成功のチャンスは薄いが、成功する場合は、国際社会が支援するべきである」と論じている。要旨は次の通り。

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 現在のデモは、国中の全ての民族、全ての階層を巻き込んで起きている。デモ隊は、もはや、より良い福祉や抑圧的な規制の緩和ではなく、イスラム革命体制の打倒を望んでおり、女性がデモを強力に導いている。

 イスラム革命体制はこの開かれた21世紀的なモラルに基づく抗議に脅かされている。聖職者たちは、治安部隊が彼女らを撃つことで秩序を回復させられるかどうか自信が無い。 

 かつて体制側は、反体制デモに直面すると体制支持のデモを呼びかけたが、今回は、体制支持デモに参加する人々はほとんどいない。将軍たちは、ハメネイ最高指導者を支持しているが、出来の悪い彼の息子を後継者にしようとすることまで支持しているかは分からない。

 次のイランの体制は、もっと国民の要望に責任を持ち、国内で抑圧を行わず、国外の問題に干渉せず、中東の緊張の緩和につながるかもしれない。逆に、国粋主義的な軍事政権が、国内では信仰の強制を緩めながらも、国民から財産を奪い続け、外国の民兵達への軍事支援を継続し、核武装化に邁進する可能性もある。今ひとつの可能性は内戦だ。

 国際社会も、イラン国民の意思に基づくイラン政府という、イラン国民と同じ目標を追及すべきだ(部外者ができることは余りないが)。

 デモの参加者は、「普通の生活」を求めている。そのためには、体制を倒すだけでは無く、内戦を避けなければならない。バラバラで指導者がいない反体制運動は統合されなければならない。

 今起きている運動は体制支持派を含む全てのイラン人のためであるということを保障する必要がある。国際社会は、40年間続いているイランの神権政治がもはや続かない可能性に対して備えるべきである。

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 西側のメディアは、上記の社説でも見られるように、引き続き、今回のヒジャブ・デモによりイスラム革命体制が崩壊する可能性を論じているが、西側の価値観のフィルターを通した希望的観測に偏っているきらいがある。

 今回の抗議活動への対応を通じて、イスラム革命の堅持を旨とする保守強硬派が強引に行政、司法の三権を掌握したことは、これまでの「国民に愛されるイスラム革命」を諦めて、イスラム革命の実現に邁進する腹を決めたことを示している。その結果、イランは、「普通の独裁国家」になり、これは確かにイスラム革命の「終わりの始まり」になり得るだろう。しかし同時に、イスラム革命体制が倒れるにはまだ時間が掛かることも間違いないように思われる。

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