2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年11月4日

 イランでは、若い女性アミーニさんの不審死をきっかけに抗議デモが始まり、イスラム革命体制打倒に転化した全国的な抗議デモが続いている。フィナンシャル・タイムズ紙の10月12日付け社説‘Iran’s youthful protests rattle an aging regime’は、イランを支配する保守強硬派が大きな譲歩をするとは思えないが、長い間苦しんでいる国民のために、イスラム革命体制は若いイラン人達の怒りの声に耳を傾けるべきであると論じている。主要点は次の通り。

Kachura Oleg / iStock / Getty Images Plus

・ほぼ1カ月の間、イランの若者達はイスラム共和国の治安部隊に抵抗し、抗議活動を続けている。女性たちの抵抗に対して全国的に支援の輪が広がり、さまざまなグループを団結させている。

・イスラム革命体制とその高齢化しつつある保守強硬派の指導者達は、その抑圧的な体制に対するかつて無い怒りに揺さぶられている。しかし、イスラム革命体制側は、これまで幾多の危機を乗り越え、情け容赦なく反対運動を抑圧して来た。

・抗議活動は、アミーニさんの死を超えて、より民主的な、かつ、世俗的な制度を求めている。

・イランでは、体制側が抑圧と支配の体制を有しているにもかかわらず健全な抗議活動の文化が存在しているが、現在の大規模な抗議活動は、1979年のイラン・イスラム革命以来の最初の大規模な抗議活動となっている。

・イスラム革命体制は生き残りにかけてはしたたかであるが、この抗議を蹴散らしても民衆の怒りと体制への幻滅は続くであろう。この抗議活動は、神権政治体制と多くの人々、特に人口の半分を占める40歳以下の若い世代との間に存在する深い不信を明確に示している。

・イスラム革命体制は、抗議活動に対する暴力を停止しなければならない。2021年のライシ大統領の当選以来、国家のあらゆる機構を支配下に置いた保守強硬派が大きな譲歩をするとは思えない。しかし、この閉塞した国家と長い間苦しんでいる国民のために、イスラム革命体制は、命を賭けて街に繰り出している若いイラン人達の怒りの声に耳を傾けるべきである。

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 イランの抗議デモは1カ月以上続いており、かつ、日本のメディアも取り上げる等、国際的に大きな関心事となっている。しかし、このデモが大きく取り上げられているのは、欧米のメディアのイラン嫌いが大きな理由ではないかと思われる。

 確かに、上記の社説が指摘するように、今回のデモは1979年のイラン・イスラム革命以来の大規模なデモに拡大している。しかし、「国民に愛されるイスラム革命体制」であることを諦めて、世俗化や経済の不振に対する国民の不満を抑え込んでイスラム革命体制を護持するために強引に三権を掌握した保守強硬派が、最後はデモを力ずくでねじ伏せてしまうのではないかと考えられる。


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