2022年12月9日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月29日

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 EUは8月にイラン核合意再開交渉の「最終合意案」を提示していたが、再開は暗礁に乗り上げている。EUのボレル外交・安全保障政策上級代表は、「米国とイランの立場が離れており、合意を達成出来るかについて確信が持てなくなっている」と述べている。

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 9月6日付けのフィナンシャル・タイムズ紙は、米国とイランとの隔たりについて次のように報じている。

・米国とイランの双方は、イランの次の2つの要求を巡り対立している。
(1)国際原子力機関(IAEA)による未申告の核物質に対する調査を中止せよ。
(2)将来再開された合意が再び崩壊してもイランが経済的な利益を得られることを保証せよ。

・米国政府関係者は、早急な進展は期待出来ず、交渉は、米国の中間選挙まで延期されるだろうと述べた。

・イラン側は、「(上記の)二つの最優先の要求が満たされるのならば、何時でも合意に署名する」と述べ、ライシ・イラン大統領は、「イランは、米国の制裁解除が持続的なものかどうか、客観的かつ現実的に検証出来なければならない」と述べ、さらに、IAEAが「政治的な動機に基づく要求」(注:未申告の核物質に対する調査)を取り下げるよう求めた。

・多くのイラン人は、イラン経済を活性化するためには核合意の再開が必要と信じているが、イランの保守強硬派政治家は、西側諸国こそがイラン原油を石油市場に再供給するために核合意を必要としていると主張している。

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 イラン側は、核合意再開交渉を長引かせて、その間に高度の濃縮ウランの備蓄を増加させようとしていると見られる。

 ボレル上級代表の提示した「最終合意案」に対するイラン側の主な要求は上記報道の通り、
(1)IAEAの未申告の核物質に対する調査の中止と(2)仮に将来、米国が再度核合意を脱退してもイランの経済的利益が保証されることの2点だが、米側関係者が「交渉進展の可能性に失望した」と述べているのは、驚くに当たらない。

 (1)は深刻な問題である。未申告の核物質の問題は、核爆弾製造技術の開発に直結しているからである。そして、(2)も相当問題がある。

 そもそも、2021年11月に間接交渉再開時に、イラン側は、将来的に米国が核合意から脱退しないことの保証を求めたが、米側は、将来の政権の手を縛ることが出来ないので、即座に拒否した経緯がある。今回の「仮に将来、米国が再度核合意を脱退してもイランの経済的利益が保証される」というのは、この要求の焼き直しに過ぎないので米側が受け入れる可能性は殆ど無いであろう。

 他方、米共和党は、政権を奪還したら核合意を再度破棄すると公約しているので、イラン側としても、早ければ24年には破棄されてしまう合意に合意出来ないのは当然である。その意味で、イラン核合意の再開の可能性は殆ど無くなったと言わざるを得ない。

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