2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年9月29日

 イランの保守強硬派は、「イランの核合意を再開させて、イラン産原油の輸入をしたいのは、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー不足になっているEUだ」と嘯いている由だが、イラン側はブラフではなく本気でそう考えている可能性が高い。

 流石にイラン側も自分達の要求が無理難題なことは理解しているだろうが、それはエネルギー不足で困っているEUが何とか米国を説得すれば良いだけで、万が一、EUが米国を説得して核合意が再開されても、イランとしては、経済制裁が解除された上で高濃度の濃縮ウランの製造技術とIAEAの調査を中止させて高濃度の濃縮ウランを核兵器化するためのノウハウを獲得出来れば取るものは取ったという事であろう。

すでに核爆弾1個以上の濃縮ウランを確保

 最近、米軍のイスラエルや湾岸協力会議(GCC)諸国との合同演習が増えている。当面は、イラン側に対するプレッシャーの意味が大きいだろうが、米国がイランの核施設に対する攻撃のオプションを真剣に検討し始めている兆候とも考えられる。さらに、イラン側が米国のプレッシャーに反発したためと思われるが、米海軍のドローン船を拿捕しようとした事件が発生しており、米国とイランとの偶発的な衝突も高まっている様に思われ、懸念される。

 一方、9月7日のロイターによれば、最新のIAEAによる報告では、イランが濃縮度60%のウランの備蓄を55.6キロまで増やしたとの由である。続けてロイターは、「外交筋」の話として、イランは、3~4週間で濃度90%の濃縮ウラン25キロを確保出来るとしている。核爆弾1個に必要な濃度90%のウランは、15キロといわれているので、イランは、すでに核爆弾1個分以上の濃縮ウランを確保していることになる。

 11年11月、欧米諸国は、「核合意の再開による制裁解除で最大の利益を得るのはイラン」との想定で核合意再開交渉を開始したが、イラン側が制裁を回避するシステムを構築し、その巧緻に長けた交渉力で、いつの間にかにイランが優位に立ってしまっている。

 しかし、歴史的教訓としてイランは、優位に立つと自信過剰になり、最後は大負けすることがある。例えば、イラン・イラク戦争(1980年~1988年)では、イラクの奇襲を受けたイランは、当初劣勢になったが、徐々にイラクを押し返し、優勢勝ちとなるところまで盛り返したが、そこで戦争を止められず、完全勝利を求めたために、その後、イラクが欧米の支援を受けて反撃し、イランは、最終的に不利な条件で停戦を受け入れざるを得なくなった。

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