2024年4月26日(金)

新しい原点回帰

2022年12月27日

これから船は大きく変わる

運河越しに臨む墨田川造船

 「これから船も大きく変わります」と石渡社長。自動車で電気や燃料電池などが広がっているのと同様、船舶でも二酸化炭素(CO2)を出すエンジンから新しい動力に変える動きが急ピッチで進もうとしている。

 「30年には売り上げの半分が新しい動力に変わることを想定して、技術開発を進めています」と将来をにらむ。現状の電気モーターは出力が弱く、馬力も弱い。墨田川造船の命である「高速」をどう実現していくか。これからが正念場。それを担うのはひとえに人材である。

 毎年秋には、進水式を行う。工場内のスロープを台車に乗せた新造船が目の前の運河に向けて滑り落ちていく。船が水に滑り込むのはなかなかの迫力だ。お披露目の行事として、近隣の小学校の子どもたちや、工業高校の学生などを招待する。都心のすぐ近くにいながら、実際の造船所を見ることができる貴重な機会だ。

 進水を祝うだけでなく、1人でも多くの子どもや青年たちに、海好き、船好きになってもらいたい思いが背景にある。日本が「造船王国」と呼ばれなくなって久しい。だが、海に囲まれた日本を守るには、自ら高い造船技術を持ち続けることが重要だ。高速にこだわり、人材を育てることに力を注いできた墨田川造船の挑戦は続く。

写真=湯澤 毅 Takeshi Yuzawa

   
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