「1本くらい本物の良い傘を持ちたいという方が着実に増えています」と語るのは洋傘製造販売の老舗、前原光榮商店の3代目、前原慎史さん。最近、東京・台東区三筋にあるショールームには、財布に余裕のある中高年ばかりではなく、若い女性などもやってくる。下町の香りが残る周辺に、お洒落なカフェやショップが増え、散策する若い人たちが増えたことも一因だが、それだけではない。
日本では、1年間に1億2000万本から1億3000万本の傘が売られているが、そのうち約9000万本がいわゆるビニール傘。雨露を凌ぐためだけなら、このビニール傘で十分なわけだが、「良いもの」を求めるニーズは着実に高まっている、というのだ。
前原光榮商店は前原さんの祖父が、傘屋の番頭から独立して1948年(昭和23年)に創業。来年で75周年を迎える。創業の時から、価格勝負の大量生産とは一線を画し、趣味に近い逸品にこだわり続けてきた。