2022年9月30日(金)

新しい原点回帰

2022年5月22日

»著者プロフィール
閉じる

磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

長瀬栄二郎
健栄住宅商事社長
1974年東京生まれ。日本大学大学院法学研究科修了後、98年に大好きだった高山に移住し、祖父と父の跡を継ぐ。2000年に社長に就任し、本業と街づくりを両輪にして奔走を続ける

 「高山は不思議な力のある場所なんです。出会いが広がり、つながっていく。不動産業はそれを支えることができる大好きな事業です」。歴史的な古い街並みが残る岐阜・高山市に本社を置く健栄住宅商事社長の長瀬栄二郎さんは自らを飛騨高山の「勝手に親善大使」だと笑う。多くの人に高山に来てもらい、好きになってもらい、事業や働く場が生まれ、地域が活性化していく。その「黒子役」になれたらというのだ。

お寺、酒蔵……
ご縁で人をつなぐ

 高山善光寺。今年、ご開帳で賑わう信州善光寺の別院が高山にある。外国や国内からやってくる観光客が宿泊し、交流できる場として広がる「お寺ステイ(OTERA STAY)」のひとつとしてリニューアルされ、2019年にオープンした。「お寺ステイ」を事業展開するシェアウィング社長の佐藤真衣さんと出会った長瀬さんが、一緒になって住職が不在だった善光寺を見つけ出し、事業として結実した。

 佐藤さんとの出会いは、全日本空輸(ANA)の専務だった野村紘一さんの紹介だった。野村さんも高山の出身で、生家の管理を長瀬さんに依頼したのがきっかけで、野村さんが主宰する経営者の会に足繁く通うようになっていた。「お寺ステイ」事業紹介を受け、高山でもそうしたお寺・空間ができたらと考えた。

 シェアウィングの所属で僧籍を持つ山本海史さんが常駐。高山に新たな職を生み、人を迎えることができたわけだ。オープンしたものの、今は新型コロナウイルスの影響で外国人観光客が激減している。高山は外国人観光客の間で特に人気が高い場所だけに、コロナが明ければ、賑わいを取り戻すことになるだろう。

宿坊をリフォームして一般客が泊まれるようにした高山善光寺。僧籍を持つシェアウィングの山本海史さん

 人のご縁が高山の活性化につながったもうひとつの例は平田酒造場。高山の旧家が1895年(明治28年)に創業した酒蔵だったが、後継者に悩んでいた。長瀬さんがご当主の不動産を管理していた。やはり、東京で開かれた野村さんの酒席でのこと、「酒蔵をやりたい人がいる」という話になった。その縁が実を結び、三重・伊勢の企業が酒造りを引き継いだ。和歌山の酒蔵で働いていた杜氏の津田篤志さんが、平田酒造場の伝統のうえに、新しさを加えた『飛騨の華』のほか、『昇龍乃舞』など新しい酒を醸している。

後継者がいなかった平田酒造場に新しく杜氏として和歌山からやってきた津田篤志さん

新着記事

»もっと見る