「会社とは何か、自問自答を続けていますが、かけがえのない『場』なのではないか、と。ですから永続することが重要で、決して潰してはいけない。改めてそう感じています」
アパレルの老舗、小杉産業の事業を引き継ぐ「コスギ」(東京都中央区)の小杉佐太郎社長はそう言って宙を見つめた。
会社は無くてはならない
働く『場』
小杉産業は1883年(明治16年)に創業。1968年にはジャック・ニクラウスと契約、その後発売した「ゴールデンベア」のゴルフウェアで一世を風靡(ふうび)した。ところがバブル崩壊後のアパレル不況の中で、主力だった百貨店での売り上げが落ち込み、2009年に経営破綻。小泉(大阪市)が再建スポンサーとして新設した受け皿会社「コスギ」が事業承継した。以来、創業者から数えて6代目の小杉さんが経営を担う。
「会社はもちろん株主のものなのですが、従業員にとっても、無くてはならない働く『場』です。働くのは生きていくためではありますが、決してお金だけではない。生きがいとか、やりがいもあるわけです。その『場』を奪うようなことを二度と繰り返さないことが私の責務です」と小杉さんは決意を語る。
小杉さんが社長になって真っ先に変えたのが、社内ではすべて「さん」付けで呼ぶようにしたこと。経営破綻するまでは、日本企業によくあるピラミッド構造で風通しが悪かったという。
「ほとんどの社員は破綻まで経営状況をよく知らず、突然、会社の破綻に直面したのだと思います」と振り返る。新生コスギでは、モノが自由に言える「フラット」な会社にしようと考え、社長のことも「小杉さん」と呼ぶようにしたのだ。