2022年7月6日(水)

新しい原点回帰

2022年5月4日

»著者プロフィール
閉じる

磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

会社はどうやって
潰れるのか自問する

 経営情報も徹底して「オープン」にすることにした。小杉さんからは毎週、全社員にメールが届く。そこにはブランドごとの業績が細かく書かれている。

 売上高の予算対比、前年同期比の他、ターゲットとしている競争相手との比較や、在庫の回転率なども書かれている。社員全員が会社の現状を常に知ることができるようにしたわけだ。

 それぞれに基準となる目標数値を示してあるので、社員はデータを確認しながら今やるべきことを自ら考える仕組みになっている。

 小杉さんは、会社はどうやって潰れるのか、と自問した。多くの会社は資金繰りがつかなくなったことで倒産する。では、資金繰り破綻を避けるためにどうするか。

 まず手形の発行をやめた。さらに仕入れ代金の支払いも当月末に支払うことにした。伝統的な経理の考え方からすれば、「馬鹿なやり方」に違いなかった。だが、キャッシュフロー、つまりお金の流れと、毎月末の損益計算書(PL)をなるべく近づけようとしたのだ。経理の発想法を大胆に変えたわけである。

 アパレル会社が陥りやすい「過剰在庫」も抱えないようにルールを明確にした。在庫が増えるとそれで資金が固定化され、一見利益が出ていても、資金が足らなくなって潰れる。アパレル会社が倒産する時にはたいがい膨大な不良在庫を抱えている。

 コスギではブランドごとに在庫の回転を毎週チェックすることに加え、3カ月たっても売れなかった在庫は大幅に在庫評価を引き下げ、15カ月たったものはほぼ無価値にまで償却する。もちろん税務上は経費として認められないが、在庫管理を厳しくし、早めに損失処理してしまうことで、リスクを減らしているわけだ。

 さらに、基準を達成できない店舗は閉店することもルールにしている。新型コロナウイルスの蔓延でリアル店舗の売り上げが大きく落ちたことで、撤退せざるを得ない店も増えた。

 社員が情報を共有するようになって、仕事の流れもスムーズになった。

 「うちの会社では先に動き出してから稟議書が回ってくるということが普通にあります。全員が現状を知っていてルールをわかっているので、稟議の前に皆が動いてるのです」(小杉さん)

 こうしたなかで、「出かけよう 家族とこの服と。」というコンセプトのもと、コロナ禍の中で「ゴールデンベア キッズ」を立ち上げたり、ジャック・ニクラウスをバックグラウンドとした「GB GOLF」を立ち上げたりした。これは、現場から出てくるアイディアを「まずはやってみよう」という考えからだ。

ジャック・ニクラウスのポスター。ニクラウスに対する「ゴールデンベア」という愛称は、ゴルフのツアーを回り始めた頃に当時の新聞社の記者に「ゴールデンベアのようだ」と言われたことがきっかけで広まった。(写真=湯澤 毅 Takeshi Yuzawa)

 また、フラットでオープンな組織を維持するには、社員一人ひとりがプロ意識を持つことが不可欠になる。

 「会社員の前に洋服屋であろう」と小杉社長は繰り返し強調している。洋服屋のプロとして製品を作り、顧客に向き合う。もともとコスギに入ってくる社員は洋服が好きで志望してくる人が圧倒的に多い。

女性向けのパーカー(写真=コスギ提供)

関連記事

新着記事

»もっと見る