フォーミングの段階で止まっている日本企業
実は逆に、現在の多くの日本企業がフォーミングの段階で止まってしまっているのだ。
本連載で解いた、インテグラル理論になぞらえていうと、ブルー段階の価値観である「人に迷惑をかけないように」「ルールを守るように」と教育し続けられる日本においては、オレンジ段階ならではの「自分はこう思う・私はこうしたい」という主義主張を持つことが難しく、全力で表現することに慣れていないのだ。
そのため、「全力でぶつかって本気で分かり合う」という人間関係を、ぜひ皆さんには経験していっていただきたい。自分と主義主張が違う相手でも、その認識さえできていれば、「あいつのことは嫌いだけど、コートにおいては信頼している」という形になりやすいのだ。
日本の失われた30年は、レガシーな大手企業がこぞって「フォーミング」状態に留まっていることが一つの要因であり、復活するキーはこの辺りにあるともいえるだろう。
さて、これらの理論である「タックマンモデル」が、1965年に提唱されていたとは驚きである。本質は古典にこそ存在しているのだ。本連載で以前に述べた、孫氏の兵法に関しても同じことがいえる。
「情報を売る」ことを商売にしている領域では、常に装いを変え、新たなことを説き、「真実はこれなんだ!」と吹聴していかなければ売れ続けることができない。
だからこそマーケティング屋が、新たなキャッチコピーを生み出し続け、ありもしない正解=青い鳥を追いかけさせ続けるという構造になりがちなのだが、本質とは汎用的であり抽象度が高いために、既に十分に古典の世界で解き明かされていることが多いのだ。
トレンドを追いかけるのでなく、本質を知りたければ古典に学ぶという姿勢を、ぜひ身につけていただきたいところだ。
『スラムダンク』も連載開始の1990年から30年を超え、漫画界の古典といえる歴史を誇ってきた。本作の数十年ぶりの新作アニメが2022年、映画公開されたというのも象徴的な出来事である。
ぜひ、古典に倣い、本質論を過去の作品から学んでみてはいかがだろうか。