2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年1月9日

 ミードは、休戦協定は永続する和平をもたらさないと考えているが、朝鮮半島の休戦協定は半世紀以上続いている。これは武装停戦が長続きする場合もある事例である。今後も朝鮮半島ではこの休戦協定にもとづく状況が続くだろう。これは平和ではないが、一つの秩序ではある。

ウクライナを今NATOに入れることは難しいが……

 ウクライナの安全保障を確保する枠組みの必要性については、ミードの言うことに賛成できる。NATO拡大が部分的であったのは間違いであったと言うのもその通りである。2008年にNATOを全面的に拡大し、ウクライナもジョージアもモルドバも入れておけば、今回のウクライナ戦争もなかっただろう。

 しかし、これらの国を今NATOに入れることは不可能である。3カ国ともその領土の一部をロシアまたはその傀儡に占拠されており、攻撃されている国である。1国ないし2国以上の加盟国への武力攻撃を全加盟国への武力攻撃とみなすとするNATO条約5条により、これら諸国がNATOに入れば、その時点でNATO・ロシアの戦争になる。安全保障枠組みは、日米安保条約と同様に、その国の施政権が及んでいる地域が攻撃された場合に発動する仕組みの、ウクライナとの新たな条約の締結をするしかないと思われる。

 ロシアの今後について、ロシア連邦の解体は望ましくないとのミードの意見にも賛同する。ただ、ソ連崩壊の時も我々が何かをしたからではなく、ソ連自身の内部事情で崩壊に至ったのであって、ロシア連邦が崩壊する時にも同様だろう。我々の希望によって崩壊したり、しなかったりということにはならない。

 ポスト・プーチンのロシアは民主的で経済的に繁栄するウクライナを横目に見て民主化する可能性が高いのではないか。民主化したロシアとは東京宣言に基づく平和条約交渉もできるだろう。

   
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