高度成長を続け存在感を高める中国が最大の脅威ではなく、曲がり角にさしかかる中国が最も危険だ。認識を改めるよう本書は訴える。だからこそ、最も危ないXデーが2020年代つまり数年以内に訪れると指摘する。歴史をみれば明らかなように、中国は米国を倒すべき敵として認識しており米国との戦争を辞さないとみる。
History casts an imposing shadow. It cannot escape the attention of Chinese policy makers that the United States has a distinguished record of destroying its most serious global challengers—imperial Germany, imperial Japan, Nazi Germany, the Soviet Union—as well as a host of lesser rivals.
「歴史は見間違いようのない影をなげかける。中国の権力者たちも見逃しようがない史実だ。米国は必ずと言っていいほど、国際社会に現れる強力なライバル国を叩いてきた。ドイツ帝国や大日本帝国、ナチス・ドイツ、ソビエト連邦、そして数々の小さなライバルたちを米国は倒してきた」
人口減少で訪れる中国の曲がり角
中国の国力の拡大がピークアウトしつつある根拠として本書は中国の人口動態の変化をあげる。中国は人口が減りはじめており、中国の権力者たちもそれを脅威ととらえ焦り始めている。
For decades, China’s birthrate has been far below the level required to maintain current population size. A shrinking, aging population cannot deliver robust economic growth. Without robust economic growth, the Chinese dream is an illusion. Which means that divorces, childless women, and sterilized men are, from the CCP’s perspective, a threat to the country’s geopolitical future.
「数十年にわたり、中国の出生率は現状の人口を維持するのに必要な水準を下回ってきた。高齢化し人口が減っては高い経済成長率は実現できない。高い成長率がなけれれば中国の夢は幻想に終わる。離婚や、こどもを生まない女性、こどもを持たない男性は、中国共産党からみれば、中国の将来の地政学上のパワーにとって脅威なのだ」
本書によれば、高齢化が進む中国で2050年には、高齢者ひとりを支える現役世代はわずか2人になるという。最近まで中国では現役世代10人で高齢者ひとりを支えていた。中国の全人口も今世紀末までには現状の半分になる見通しだという。2020年に生まれた子供の人数も中国では過去60年でみて最も少なかった。
中国経済は人口動態の面からみて確実に衰えることがすでに見え始めている。しかも、中国の場合、枯渇しつつあるのは人的な資源だけではない。グローバルなハイテク覇権競争のなかで米中の対立が激しくなり、半導体などのグローバル・サプライ・チェーンから中国は閉め出されつつある。
しかも、過剰投資で高い成長を実現したかつての日本と同じように、中国は投資主導で経済を拡大してきた。生産性を無視した投資があだとなり日本が失われた30年に突入した歴史が示すように、中国経済が近い将来、失速するのは明らかだと本書はみる。