国際経済への影響は?
香港ドルがペッグ制を維持できたのは、潤沢なマネーサプライがあるという側面がある。これについても久末氏は「主要産業である不動産は、香港が抱える諸問題によってお金が入らなくなり、不動産価格が低迷。結果として外貨の備蓄が厳しくなっていくことが想像できる」と不安要素を挙げる。それを期待しているのが、米投資家ビル・アックマン氏で、香港ドルが崩壊した場合に儲けが出るポジションを組んでいることを明らかにしている。
さらに、マネーサプライが厳しくなりペッグ制が維持できないとした場合については、「香港ドルの変動許容レンジを広げることはありえる。その後、通貨バスケット制に移行するという流れである。ただ、米ドルが安定しているときに背を向けることは逆に香港ドルの信用に傷をつけるから、面子を保つという意味で米ドルの信認が極度に低下する事態になったときに香港政府のほうから三下り半をつけるというやり方が考えられる。その方が比率も下げやい。バスケットされる主な通貨は、人民元、米ドル、ユーロ、円になるでしょう」と推測した。
貿易会社で働く友人は「いつかバスケット制が採用されることは、何となく想像できるけど、実際にどのような影響を受けるのか心配」と語っていた。久末氏に影響を聞くと「ある程度の混乱は避けられないが、当面の間は大きく変わることがないと考えている。もはや、香港を噛ませた決済は、今までとは考えられないリスクが起き、減じることなく、高まっていく現実に気が付くべき。香港を使った決済や資金管理は『利便ではなくリスク』ということについて日本企業を含めた国際企業が直視し、リスクヘッジできる場所を探すことになるだろう」と話した。
まず、人民元が国際通貨になるにはかなりハードルが高いので、香港ドルが人民元に切り替わるというのは、ほぼあり得なさそうだ。しかし、ペッグ制からどこかの段階でバスケット制に移行する確率はどうやら高い。
別な香港人は「今のところ香港で稼げるから香港にいるけど、状況が変わったら、自分にとってベストなところに引っ越すつもり」と現実主義の香港人らしい話をしていた。想定外を含めた為替リスクをどの位正確に評価できるか……。来たるXデーに備えておく必要がありそうだ。