2022年7月1日、香港は中国返還25周年を迎えた。習近平国家主席が来港したほか、李家超(ジョン・リー)氏が新行政長官に就任した。1997年から2047年までの50年間は一国二制度を採用し、その間は言論の自由などを保障すると約束されていたが、その半分の25周年の時点でそれらがすでに損なわれつつある香港。現地はどのようになっているのか?
習主席、感染対策で深圳に宿泊
習近平国家主席来港は、2017年の林鄭月娥(キャリー・ラム)前行政長官が新行政長官に就任した時以来5年ぶりだ。また、返還25周年を迎えたこと、香港国家安全維持法(国安法)を含めたこれまでの成果を強調するべく以前から来港が噂されていた。ただ、上海で新型コロナウイルスの感染が爆発したことや香港も6月に入り再び新規感染者が増加傾向を示したこともあり、最終的な発表は6月25日だった。
習主席は6月30日と7月1日の2日間の日程で香港を訪れた。中国本土から出るのは約2年半ぶり。前回の来港は飛行機だったが、今回は2018年に開通した高速鉄道を利用し、香港と中国が経済で一体化していくのをアピールする意図がうかがえた。
しかし、香港での感染を恐れたのか、初日30日に香港入りした後、ハイテク企業が集まる「香港科学園」を視察し、夜には香港政府幹部らとの晩餐会に出席したものの、香港には宿泊せず深圳に滞在。翌1日に再び香港に来て祝賀行事をこなし、香港を離れた。
香港政府側も、習主席に感染させてはならないと、林鄭月娥(キャリー・ラム)前行政長官などの香港政府幹部のほか財界関係者など習主席と濃厚接触しそうなメンバーのほか、記念行事に参加する小学生までもが6月27日から4日間、ホテルで隔離をする徹底ぶりだった。
これまで「デモ会場」とされていた場所に人はゼロ
式典が行われる会場周辺は厳戒態勢で多くの道路が封鎖されたほか、最寄りの地下鉄駅には停車せず、そのまま通過して次の駅に向かった。台風が香港に近づいており6月30日はシグナル3が発令された(香港は台風の強さを数値で発表。シグナル8が出ると事実上、市民は自宅に戻って避難しなければならなくなる)。実際の雨は、時折、激しく降る程度だったが、封鎖した道路を管理している警察官は雨の中の警備となった。