2024年6月19日(水)

WEDGE REPORT

2022年7月4日

それほど重苦しくない街の雰囲気

 もう1つ、現地で感じるのは、国安法制定後、一気に街の雰囲気が重苦しくなったと多くの日本人が感じている節があるが、実際はそうではない。

 日本でも大ヒットした映画『トップガン マーヴェリック』は香港でもヒットし、MIRRORという人気アイドルグループを起用したポスターがあちらこちらで貼られているなど、巷の雰囲気はこれまでと大きな差はない。社会が白から黒に一気に変貌することが難しいのと同じで、一気に専制国家のような街になったわけではない。もちろん、これから時間をかけて変貌はしていくのだろうが……。

ショッピングモールでは、日本や欧米のブランドショップと25周年の回顧展が立ち並ぶ。経済と政治のコントラストこそが香港ならでは

 オミクロン株が主流になり日本でも防疫措置を緩めているが、香港も同じで、街を歩けばそれなりに活気があり、リバウンド需要でレストランの予約が困難なところが増えてきた。防疫対策で中国人観光客がいないので小売業は厳しいのは事実だが「人が減ったから、街は歩きやすい」と喜ぶ香港人も少なくない。

 香港人と話をしたり、取材したり、街を歩いて感じるのは香港人のしたたかさだ。アヘン戦争で清朝からイギリスの統治下になり、第二次世界大戦では日本が支配し、敗戦により英国に戻り、1997年から中国が主となった。トップが常に変化し、主権者に翻弄され続けてきた歴史があるので、どちらかと言えば、自由がない中で生きてきた時の方が長く、一定の制限下でどうやって生き抜くのかという術を彼らは知っている。この辺の生命力というかしぶとさは日本人の想像を超えている。

 ある50代の男性は「若い人たちは英国統治時代を知らないから、憧れるのは理解できる。自分としては経済発展という意味ではありがたかったけど、気持ち的には、植民地の人間ということで、ちょっと負い目というかみじめだった。だからこそ、経済で成功してお金持ちになろうと努力してきた」。この心情こそが香港が世界的な経済都市になった大きな原動力だ。

 民主化という意味で、昔の香港に戻るのはミッションインポッシブルかもしれない。民主活動をするなら地下化する。しかし、幸せの追求において香港人があきらめることはなく、少なくとも、今の状況下でもその方法を見つけ出していくことは間違いない。

 そのプロセスの中で、結果的に民主化への進展がないという保証もない。香港人を侮ってはいけないと筆者は思っている。

   
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