2024年4月20日(土)

From LA

2023年1月17日

ソニー側とホンダ側の目的意識は一致しているのか?

 しかし、実車として販売していくことにはそれなりの困難も伴いそうだ、というのが今回のAFEELAを見た率直な感想だ。まず、ソニー側とホンダ側の目的意識は一致しているのか? というのが大きな疑問としてある。ソニーはサプライヤーでもあり、ソニー製のモニターやカメラ、エンターテイメントシステムなどを供給する企業でもある。

 一方のホンダは、米国ではGMと提携し、同社のEV向けプラットフォームであるアルティアムを使ったEVの製造が視野に入っている。

 つまり、自動車メーカーとしてのホンダの立ち位置はSHMに注力しているとは言い切れず、GMと組んだ量産型車両の販売が営業的には比重が大きいと思われる。ソニーも自社のシステムを他社に販売するというビジネスモデルから、SHMだけが車両関連ビジネスの中心になるとは言えない。

 もちろん今後の動き次第で、SHMとGMが提携し、GMの持つリソースを流用した車作り、という方向性もあるのかもしれないが、GMはクルーズという独自の自動運転システムを構築しており、また車内エンターテイメントシステムのハブとしてオンスターを持つ。これが一部機能としてソニーの事業と競合関係にあり、完全な提携は難しいだろう。

 ソニーが持つ最先端の映像技術などを詰め込んだAFEELAは、一部では販売価格が1000万円程度になるとも言われる。このクラスになると競合にはテスラモデルSやメルセデスEQシリーズ、BMWの上級モデル、ルーシドエアなどのモデルがあり、競争に打ち勝ってシェアを得るのはハードルが高くなる。

 ソニーが今回強調したOTAだが、実は車の性能に関わる部分でもOTAによる解決を行うメーカーが増えている。例えば、テスラは2018年にモデル3を発売した当時、米コンシューマー・レポート誌が行った初期品質調査でブレーキ性能が「推奨しない」と判断された。より車重の大きいフォードFシリーズピックアップトラックと比べ、制動距離が長かったせいだ。

 これにイーロン・マスク氏が反発、即座に再テストを申し出た。その結果、テスラはテスト車両に一切手を触れることなくOTAでのソフトウェアアップデートだけで制動距離を7メートル近く縮め、コンシューマー・レポートはブレーキ性能を「推奨」に変えざるを得なかった。

 こうしたことが可能になるほどの車に関するソフトウェア技術をSHMが持つのかどうかは未知数だ。一方でエンターテイメントに関わるサブスク機能については強みを発揮できる可能性もある。

 「動くスマホのようなもの」と、SHMが表現する通り、EVとはハードだけではなくソフトによって進化することができる車だ。それをSHMは正しく理解している、というのは会見から感じられたが、実車でそれをどのように実現し、ユーザーの人気と信頼を勝ち得ることができるのか。AFEELAには現在のEVが喧伝する性能は備わっているが、同時にCESで他社が見せたような目新しさは感じられなかった。発売が始まる2026年までには、さまざまなブラッシュアップが行われるだろうが、今後3年でEVの性能や機能はさらに進化する。それに合致する、魅力的な車を見せてくれることを願うばかりだ。

   
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