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2013年7月8日

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金子熊夫 (かねこ・くまお)

外交評論家・エネルギー戦略研究会会長

外交評論家。元外交官、外務省初代原子力課長、元東海大学教授。退官後エネルギー戦略研究会(通称EEE会議)を創設し、会長として現在も活躍中。主な著書は「日本の核 アジアの核」(朝日新聞社刊)、「小池・小泉『脱原発』のウソ」(飛鳥新社、11月6日発売)など。1937年愛知県生まれ。ハーバード大学法科大学院卒。

 現行日米原子力協定で再処理の「包括的事前承認」は確保されているものの、本格稼働が大幅に遅れている青森県六ヶ所村の再処理工場が、協定有効期限の2018年以後どうなるかは、まったく不透明である。

 六ヶ所再処理工場は度々の不具合による計画の遅れで、長年足踏みしてきたが、ようやく今年10月に操業開始可能というところまできた。5月にはガラス固化体製造試験も終了、国の使用前検査を受ける準備が整った。ところが、原子力規制委員会が5月半ばに突然、新規制基準の策定が間に合わないとの理由で「待った」をかけた。

 新基準施行は早くて12月とみられる。しかも原発再稼働の審査でマンパワーを取られている規制委が、再処理工場の審査をどんなスピード感で進めるのかわからない。規制委は工場が立地する下北半島の断層も調査する意向を示している。

 そうなると気になるのは、米国政府の反応である。自国内での民生用核燃料の再処理を原則的に止めている米国は、基本的には、日本が原子力技術、とりわけ再処理を軸とする核燃料サイクルの技術を磨き上げ、それを厳正に管理していくことを期待している。核不拡散に「甘い」中国やロシアの原発が世界に輸出され、核技術が不安定に拡散するのを防ぐ意味でも、日米が連携して世界の原子力を牽引することで、核管理の秩序を保っていくべきだという考え方である。だからこそ、3.11事故後、民主党政権が掲げた「原発ゼロ」政策に米国は懸念を示したのだ。

 しかし、日本が六ヶ所工場の稼働にこのままてこずれば、どうなるかわからない。米議会には強烈な核不拡散論者(イコール再処理反対論者)もいるのだ。

 再処理の特権は、協定上の既得権だと思って安閑としていてはいけない。「権利の不行使は権利の放棄」とみなされる。一旦放棄したら二度と回復できないだろう。六ヶ所工場の稼働は、外交の歴史的経緯とエネルギー安全保障という縦軸、横軸を持って、俯瞰的視点から検討されなければならないテーマである。

 とりわけ六ヶ所工場の事業者である日本原燃は覚悟を持って一層奮励努力してもらいたい。まさに背水の陣で臨むべきで、今度また失敗したら後がないと肝に銘ずるべきだ。

[特集] 日本のエネルギー政策を考える

◆WEDGE2013年7月号より

 

 

 

 

 

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