中国の台湾への軍事侵攻の可能性をどう見るべきか。米軍関係者の中では、時期について意見は分かれているが、中国による台湾への軍事侵攻の可能性を否定する者はまずいない。そのような議論をすること自体が中国に対する抑止効果を持っていることは言うまでもない。
昨年のペロシ下院議長訪台に合わせ、中国は台湾周辺海域へのミサイル発射を繰り返す大規模演習を行い、うち数発は日本の排他的経済水域(EEZ)内部に落下した。
また、昨年末から、中国は1カ月足らずの間に台湾海峡を中心に2回にわたって軍事演習を行い、台湾側を威嚇した。そのうちの一部軍用飛行機は台湾の防衛識別圏(ADIZ)内に侵入したが、中国側は、これを「外部勢力と台湾独立分離主義勢力の挑発的行動に断固として対抗するため」と強弁した。
いざ「台湾有事」の際に、米軍が台湾支援のために全面的に協力してくれるかどうかについては、台湾の市民たちの間でも議論は絶えないようだ。しかし、バイデン大統領が昨年末、今後5年間に台湾に計100憶ドルの軍事支援を提供する内容の「2023会計年度国防権限法案」に署名したことは台湾人にとっての一大安心材料となったと言えよう。この法案には2024年台湾海軍を世界最大の多国籍連合海上訓練「環太平洋軍事訓練(リムパック)」に招待する勧告案も盛り込まれている。
米国はウクライナ支援の経験も参考に
こうした中、在日米軍海兵隊司令官ピアマンはつい最近、「米国としては中国による台湾侵攻への対策を準備中であり、これは、ロシアに対抗するウクライナを支援した西側諸国の経験を基盤にしている」と最近のウクライナへの軍事支援を参考としていると手の内を明らかにした。
なお、米海軍第7艦隊所属の米イージス艦が中国側の軍事的威嚇に対抗するような形で、台湾海峡を通過したのは今年に入ってからのことであり、台湾海峡をめぐる緊張関係は強まることはあっても、弱まることはない状況となりつつある。