2023年2月8日(水)

バイデンのアメリカ

2023年1月10日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 「対中国抑止」に照準を当てた米議会主導の軍事予算配分がにわかに加速してきた。そのペースは政府の要請規模をも上回り、バイデン政権としても、インド太平洋における具体的な米軍プレゼンス強化措置などについて、追認せざるを得ない状況となりつつある。

(Tanaonte/gettyimages)

倍増する対中国軍事予算

 米議会は昨年末、総額8兆5800億ドルに上る2023年国防権限法案を採択した。これは、バイデン政権が要請した額より約5%, 額にして450億ドルも上回るもので、対前年度比でも10%増という大規模なものとなった。

 背景には、中国の軍事力増強への対抗意識がある。

 中でも特に注目されるのが、「太平洋抑止構想Pacific Deterrence Initiative」(略称PDI)と呼ばれる特定地域に限定した特別予算計上の動きだ。

 これは、増大する中国の軍事的脅威に警戒感を抱く米上下両院軍事委員会関係議員の提唱によりバイデン政権下の21会計年度から初めてスタートした。すでに14年、ウクライナ危機をきっかけに欧州舞台における「対露抑止」目的で設けられていた「欧州抑止構想European Deterrence Initiative」(EDI)の〝アジア版〟といえる。

 PDIの具体的目的、計画について、国防総省は「中国の多方面にまたがる脅威を念頭に、インド太平洋における脅威対処と抑止力強化を目的としており、グアム・ミサイル防衛、同盟諸国間の軍事訓練、能力強化、同地域における抑止力および危機対処能力の向上、関連軍事施設整備など多岐にわたる必要措置を支えるものである」と説明している。

 国防総省はこうした方針に沿って、昨年4月、23年度国防権限予算の一部に含まれる「PDI関連支出」として61億ドルを議会に要請した。これは、初年度の21会計年度支出の3倍近くにも達するものであり、米議会の指示により「インド太平洋軍」司令部が見積もった必要額をある程度まで反映させたものだった。まさに政府が、対中強硬姿勢をとりつつある議会ペースに追随する格好となった。

 ところが、このあと、大きな話題となったのが、議会側の反応だった。

 政府から送付されてきた「PDI関連支出」規模について、上下両院の軍事委員会有力メンバーの間から「政府は中国の増大する脅威を十分に認識していない」「支出額は不十分」といった不満の声が一斉に広がった。

 というのも、前年の22年国防権限予算に盛り込まれた「PDI関連支出」は、議会審議をへて最終的に71億ドルに達しており、今回はこれより10億ドル近くも下回っていたからだ。

 このため、与野党議員を交え昨年末にかけて展開された白熱の審議の結果、最終的に23年度国防権限予算に含まれるべき「PDI関連支出」について、政府案を大きく上回る115億ドルとすることで決着した。


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