2024年6月20日(木)

バイデンのアメリカ

2023年1月10日

 さらにこの関連で、「インド太平洋軍」司令官からの追加申請があったとして、約10億ドルの支出についても了承された。合わせて今会計年度中に125億ドルが、インド太平洋における中国の脅威対処に当てられることになった。

 このほか、台湾防衛のために別途10億ドルの軍事援助を行うことも明記された。

後手後手のバイデン政権

 同年度国防権限予算全体が前年比10%増だった中で、「PDI関連支出」だけは実に70%近くも増えたことになり、米議会がいかに、中国に対する警戒感と対抗意識を高めつつあるかを如実に物語るものといえよう。

 ちなみに、同国防権限予算に盛り込まれたウクライナに対する新規軍事援助額は、8億ドルだった。ただ、これとは別に、ホワイトハウスは去る1月6日、30億7500万ドルの追加軍事支援を発表している。

 また、「PDI」と対比される欧州を舞台とした「EDI」関連支出は、14年当初は300億ドルにも達したが、その後、先細りとなり、23会計年度の国防権限予算では、42億ドルにまで激減した。

 このことを見ても、予算支出の審議・決定権を握る米議会が、国防予算に関し、その重点を欧州からアジアにシフトさせてきたことを明確に裏付けている。その背景にあるのが、米国にとって「唯一の競争相手」である中国の台頭に対する警戒感にほかならない。

 この点に関連して、23年度国防権限予算審議に携わった下院軍事委員会有力議員(複数)は、「PDI」の重要性について「インド太平洋における米軍の配備態勢、能力、作戦展開を改善し、中国と対処するための抑止力向上を図ることが緊要である。その中には、作戦機の飛行時間、艦船の航行時間延長など、同海域における米軍プレゼンスの安定的維持も含まれる」と強調している。

 一方、議会の動きとは対照的に、バイデン政権の取り組み姿勢はこれまで、どちらかといえば、後手後手に回ってきたきらいがあった。

 軍事専門誌の「The War on the Rocks」は、従来の政府の不十分な対応について、以下のように厳しく指摘している:

 「国防総省は過去10年、中国の軍事力が急速に増強されてきたにもかかわらず、研究開発、戦力近代化といった長期投資のために、直近の戦闘態勢、戦力向上のための投資を犠牲にしてきた。実戦配備時期が25年、30年、35年へと遠のいていくような〝未来戦力〟の建設に傾注してきたのとは対照的に、中国の戦力近代化は着々と進められ、台湾武力併合という野望達成時期も49年から35年、そして27年へと逆に迫ってきつつある」

 「習近平国家主席の在任中にも力ずくの統一を目的とした先制攻撃がありうるとの観測が出始めているにもかかわらず、国防総省は基本的に同じコースをたどってきた。もちろん、近年、あらたにいくつか『作戦コンセプト』が導入されてきたことは事実だが、それらを実行に移すための戦力態勢、兵站、空軍力とミサイル防衛の一体化、さらにはインテリジェンス・監視・偵察・指揮管制といったさまざまな統合的戦争能力のための予算面での手当は不十分なままとなっている」

 「米国は14年、プーチンがウクライナに侵攻し、クリミア併合に踏み切った時点で初めて、欧州における抑止力の重要性を認識し、予算計上に乗り出した。しかし、世界のいかなる大陸も戦争から無縁ではあり得ず、暴君は征服が得になることを確信している。われわれは、事前の十分な備えもないままインド太平洋における悲劇をただ傍観するしかないのだろうか? 遅きに失することなく今こそ、『太平洋抑止構想』に十分な資金を注入すべきである」


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